日本の食の源「出汁」を味わう異空間「barrier」
浅野川大橋から徒歩1分。ひがし茶屋街にほど近く、主計町茶屋街の入り口近くに2023年7月にオープンした「barrier」。その名の通り”結界”をコンセプトに、伝統と革新が見事に調和した空間で、出汁の新しい世界を体験・体感できる。
結界の内に進んで“伝統の再定義”を全身で感じる
「barrier」があるのは金沢東山エリア。以前は『たばこが吸える喫茶店』のキャッチフレーズで知られた珈琲館のあった場所だといえば、地元の人ならピンとくるだろうか。
主計町とひがし、2つの茶屋街から近く、観光客も多く訪れるにぎやかな場所にあって、店内に一歩進めば、洋を感じる白壁の空間に漂う出汁の香り。アンマッチにも感じるその空間に一瞬、脳が混乱する。
その混乱こそが「barrier=結界」の内側に入り込んでしまった合図なのかもしれない。
1階はカフェと軽食のスペース
barrierは、当サイトで以前紹介した「COIL(http://kanazawa-okiniiri.com/recommend/coil-kanazawa/)」、「TILE(http://kanazawa-okiniiri.com/recommend/tile-kanazawa/)」の姉妹店。運営する株式会社サビーは、フードビジネスを中心に「訪れた人が体験することで完成する空間」をプロデュースする会社だ。
COILとTILE、そしてこのbarrierは食を通して”伝統の再定義”を体験・体感するという共通のテーマを持つ。
COIL(左)とTILE(右) barrier同様、“伝統の再定義”をテーマに、非日常的な期待を感じさせてくれる2店舗
その共通のテーマの中で、barrierは「喧騒とは線をひき、界を結して、古えと現代、陰と陽の対比を感じていただく神聖な空間をつくる結界」をイメージしているという。
サビーPR担当の宮本さんによると「“陰と陽“、“昼と夜“、そして“古と新“の対比を通じて、アートと料理が絶妙に結びつき、お客様が時間や空間を超えた旅に出るかのような体験を提供します」とのこと。
静謐(せいひつ)という言葉がぴったりの2階メインダイニング
出汁で食べる日本の食文化
2階のメインダイニングには個室が4つ。人数に応じて部屋の大小はあるものの、どの部屋にも共通しているのが壁も畳も真っ黒なこと。部屋全体を照らす明かりや広いテーブルははなく、個々の席をスポットライトが照らしている。
一人ひとりの膳として使われているのは「三方」、料理は「岡持ち」で運ばれる。
神仏に捧げる供物を置くための三方に、出前などで使われた岡持ち。どちらも日本の伝統的な道具であり、ここでも非日常と日常がミックスされている。
神事では白木の三方。朱塗りされていることでハレの非日常感が高まる
barrierのメニューは和食のコース仕立てで、どれもメインは3つの椀料理。
一番の特徴は、椀料理に出汁をかけて食べることだ。
出汁は一人分ずつサイフォンで抽出。たっぷりの鰹節でとった一番出汁をかけることで、料理はその味わいや香りにさらに深みを増す。料理によっては、出汁をかけてしばらく置くことで変化する味わいまでを楽しむこともできる。
食べる直前、自分で出汁をかけることで椀料理が完成する
これに季節の押寿しと締めのラーメン、デザートのマイクログリーンのアイスクリームがつく。
和食の締めにラーメン? と思うかもしれないが、ラーメンは最近、外国人観光客から人気の「日本食」だ。
椀料理とは別の出汁が味わえるラーメン。締めにふさわしいさっぱりとした味わい
コースは椀料理の素材や内容で変わる5つ。そのうちひとつは、精進料理のコースになっており、出汁は椀、ラーメンともに昆布出汁が使われる。
春の山菜と白海老の椀、のどぐろといくら添え、季節野菜と牛肉 すき焼き風(Dコース8,800円)
カフェスペースでも金沢の伝統を体感
白壁の1階で提供されるのはコースではなく甘味とおつまみ小皿(各330円)におでん(140円~)。散策の途中の一休みや、昼飲みができるカフェとして立ち寄るのにぴったり。
アルコールは、金澤麦酒(770円)や金沢産のジン(880円~)、加賀の梅酒(660円)など地酒を中心に、グルテンフリーの発泡アルコールも揃っているので、金沢名物のおでんをつまみにゆっくりと過ごしたい。
カウンター席では、出汁の抽出と立ち上る香りを間近で感じることができる
甘味はその時々で内容ががらりと変わる、こともあるとか。取材時は「ぼたずし(150円/個)」がラインナップされていた。
聞きなれない名前だと思ったら、オリジナルメニューだという。ほんのりと甘く味付けたもち米に、抹茶やほうじ茶、きなこ、よもぎなどをトッピングしてぼた餅に見立てた「寿司」なのだとか。
「寿司」とはいえ、歴とした甘味である。
見ただけでは味が想像しきれないのも、再構築された伝統なのだろう
急須で楽しむお茶とともに、存分に結界の内側を堪能してほしい。
加賀棒茶や煎茶はもちろん、アップルミントやプーアル茶、とうもろこし茶など多種類がそろう(660円~)
Instagram https://www.instagram.com/barrierofficial/
※価格はすべて税込み
取材日時 2024年4月24日
取材・文 小杉智美
店舗情報
店舗名 | barrier |
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住所 | 金沢市尾張町2-14-21 |
電話番号 | 076-204-7018 |
営業時間 | 11:00〜22:00(L.O.21:00) |
定休日 | 不定休 |