金沢の中心で極上の非日常と薬味海鮮丼を味わう「TILE」

金沢駅東口から徒歩5分。武蔵ヶ辻へと続く大通りを少しだけ離れた金沢らしい路地の奥にひっそりと建つ築110年の町家で味わうのは、今まで食べた海鮮丼のイメージを一新する芸術品のような美しい”薬味”海鮮丼。

異質感の演出で、他では味わえない圧倒的な特別に身も心も浸る

「古都」と評されることも多い金沢。古い町並みや築100年を経た建物が多い中にあって、高層ビルが並ぶ金沢駅東口周辺は少し異質なエリアといえるかもしれない。そんな金沢駅東口を借景にしているのが築110年の町家をリノベーションしたTILEだ。

現代的なロケーションも、町家も金沢ではさほど珍しくはない光景だけれど、その町家の前に立てば、その瞬間から「意外性」をはるかに超えた「圧倒的な異質感」を感じるはず。

 

かがんで入る「にじり口」は、客が自らデジタルロックを解除するシステム。自分だけの秘密の場所めいた演出に心が躍る。

 

階段を上って通される客席は階段を上がった先にある広間。時代を経て光沢の出た太い梁が天井を巡り、ほぼそのまま残された土壁の一部には、補強か湿気よけに使われたのであろう古い新聞が貼られている。木枠の窓もそのままで、今ではすっかり見なくなったねじ式の鍵がかわいい。

ここでも真っ先に感じるのは異質感。窓や階段、土壁の周りに張り巡らされたガラスに縁のない畳が独特の雰囲気を醸し出している。極めつけは、整然と並べられた「謎の木箱」だ。食事処というより、座禅や瞑想のための僧堂のようにも感じる。

この店を運営する株式会社サビーのPR担当・宮本さんによると「そう感じるお客様は多くいらっしゃいます。『つい姿勢を正してしまう』『正座を崩せない』よくそう言われますが、楽な姿勢で食べていただくのが一番です」とのこと。

異素材がミックスされ、スタイリッシュで独特の世界観が作り出された客席。店内に入ってからずっと続く不思議な雰囲気にワクワク感が高まる。

 

実は、謎の木箱の正体は「箱膳」と呼ばれるもの。中には食器が収められている1人用のテーブルだ。明治初期頃までは、庶民の間では一般的に使われていたという。

TILEではこの中に、茶器やナプキン、品書きなどが収められている。

品書きまでも凛としてスタイリッシュ。

 

 

 

ここでしか食べられない唯一無二の海鮮丼

メニューは「金沢薬味海鮮丼」のみ。新鮮な魚介や昆布じめなど金沢らしいものから、ローストビーフといったものまで約30種類の中から好きなネタを組み合わせてオーダーするスタイルだ。

鉄瓶で淹れられた棒茶を飲みながら待っていると、やがて運ばれてくる海鮮丼の姿にも驚きが生まれる。

シャリを盛っているのはガラスの高台鉢、ネタはスクエアのガラス小鉢。よく見知った海鮮丼とは大きくかけ離れた姿に「どうやって食べるのが正解?」と戸惑う人もいるのだとか。「もちろんお好きに盛り付けて、自由に食べていただければいいんです!」と宮本さん。ひとつずつ盛って個々のネタを味わうもよし、全部のせてダイナミックに食べるもよし。ちなみに「スクエアカットにしたネタをタイルに見立てたのが店名の由来」なのだそうだ。そう聞くと、ネタを盛ったガラスの小鉢やシャリや自家製のぬか漬けの器のカットもタイルに見えてくるから不思議。

 

ネタの数もお好みで。五つのネタ(2,750)、六つのネタ(3,080)、八つのネタ(3,740)。すべて最中スープ、自家製ぬか漬け盛り合わせセット。ネタ追加(330/1)、〆のだし茶漬けセット(330)

 

独特で特徴的な提供スタイルはたしかに目を引くが、それだけで「唯一無二」と評したわけではない。実は、この「金沢薬味海鮮丼」の一番の特徴は、ネタと一緒に盛り付けられている薬味野菜にある。

この薬味野菜は、単なる彩りではなく「マイクログリーン」と呼ばれる野菜の若芽。近年スーパーフードとして世界的にも注目されているものなのだ。

マイクログリーンには、ルッコラや赤キャベツ、アマランサス、ターツァイ、ミニセルリーなどさまざまなものがあり、どれも通常の野菜よりも栄養価が高い。一般的に海鮮丼や寿司などで不足しがちなビタミン類を豊富に含むため、栄養バランスが格段にアップする。

TILEで使用しているマイクログリーンはすべて自家栽培。ネタとの相性を考えて、約20種類ものマイクログリーンが作られている。

 

栄養価も香りも高いのに、エグみや苦味は通常の野菜より少ないのも特徴。これをたっぷり使えるのは自家栽培だからこそ。

 

テイクアウトも可能。2段重で提供される「薬味海鮮ちらし重(2,500)」は、おうち時間を華やかに彩ってくれそう。

 

 

 

店舗づくりのキーワードは「体験・体感」

入店する瞬間から食べ終わるまで、ずっと驚きっぱなしのTILEを作ったのは、株式会社サビー。飲食店の運営だけでなく、フードビジネスの枠にとらわれず、グリーンをディレクションしたり、店舗・空間プロデュースと幅広くイベントも手がける会社だ。「どんな会社なのか」と聞くと「ナニかとナニかを混ぜ合わせたり組み合わせたりして、これまでになかった新しいナニかを作る会社」と返ってきた。店舗やスペースをプロデュースするときに必ず考えるのが「来てくれた人に何を体験してもらおうか」だという。訪れた人が行動することで完成する空間づくりがサビーのプロデュースに共通するコンセプト。

TILEのコンセプトは「伝統の再定義」なのだそう。確かに、金沢という歴史あるまちで、110年の時間を刻んだ町家で、箱膳という伝統的な食べ方を提供しながら、ミックスされる現在と現代。訪れた人は、提供される食事や場所を通して「温故知新」を体感する。

おいしいのはもちろん、驚きと楽しさと金沢らしさも存分に堪能できるTILEでココロもカラダも喜ぶ薬味海鮮丼を体感しよう!

 

TILEインスタグラム

 

※価格は税込

 

取材日時2022225

 

取材・文 小杉智美

 

店舗情報

店舗名 TILE
住所 金沢市此花町4番18号
電話番号 076-255-2802
営業時間 11:00~15:00 (L.O 15:00)、17:00~22:00 (L.O 21:00)
定休日 不定休