料理を口にするまでの過程すら楽しめる手巻き寿司「COIL」
金沢の中心的商業地のひとつ武蔵ヶ辻。交差点に建つかなざわはこまちの2階にある「COIL(コイル)」は、細巻き寿司を自分で巻いて食べられる。2021年には、トリップアドバイザーが優れたサービスを提供する店舗に与えるトラベラーズチョイスに認定された注目店だ。
「体験アミューズメント型飲食店」と名付けたい
「細巻きずし」といえば、日本では古くから冠婚葬祭や年中行事などで気軽に食べられてきた料理のひとつ。寿司店でも根強い人気があり、スーパーなどでも購入できるのが魅力で、日本のファストフードといえる食べ物だ。
それほど身近な細巻き寿司だが、巻き簾(す)を使って自分で巻いたことがあるという人はどれくらいいるだろうか。そもそも巻き簾(す)が自宅にあるという人は案外少ないかもしれない。
COILは「金沢の食文化をカジュアルに味わってもらいたい」と、どちらかと言えば金沢を訪れる外国人観光客を狙って誕生した。オープン以来、日本文化に触れたいという外国人客だけでなく「自分で巻いてみたい!」と日本人観光客の人気も集まった。さらに最近では、地元客の割合が増えているのだという。
出来上がった料理を食べるだけでなく、自分で完成させるのが楽しい。ちなみに細巻き寿司は英語で「slender sushi roll」
巻き寿司を自分で作るというと、難しそうなイメージもあるが、COILはあくまでも「カジュアル」がコンセプト。
50種類以上の中から具材を選び、巻き簾で海苔巻を作るのは客自身が楽しみ、酢飯はあらかじめ海苔に広げられた状態で提供される。
「海苔に酢飯を薄く均一に広げるのは案外難しいんですよ。特に外国からのお客様はご飯自体慣れていない方がいらっしゃるので、それならその部分は店でやってしまった方がお客様に楽しんでいただけるでしょう」と教えてくれたのは薬味海鮮丼のTILEの記事(http://kanazawa-okiniiri.com/recommend/tile-kanazawa/)にも登場した株式会社サビーのPR担当・宮本さん。COILとTILEは姉妹店なのだ。
サビーは「お客様に何をしてもらおうか」をコンセプトに、訪れた人が行動することで完成する空間をプロデュースする企業だ。
酢飯はおかもちをイメージした箱で提供される。具材を乗せたかわいらしい九谷焼の豆皿は、土産に購入することも可。
店内を回遊するように、スープを選び、茶文化も体験!
COILで体験できる金沢文化は、巻き寿司だけにとどまらない。
オプションメニューとして用意されているのは「モナカスープ」と「利き茶スタンド」。
モナカスープは、味噌汁やお吸い物、洋風スープがラインナップされている。一杯分ずつ最中に包まれ、山中塗の椀に入っている。ここから好きなものを何倍でも選ぶことができる。
利き茶スタンドも何杯でもおかわり可能で、煎茶、玉露、金澤棒茶などから好きな茶葉を選んで急須に入れ、釜から竹製の柄杓で湯を注ぐスタイル。「以前、急須と柄杓を珍しがってお茶を何杯も、楽しそうにおかわりする小学生の男の子がいて、一緒にいらっしゃったお祖父様が苦笑なさっていたことがありました」(宮本さん)。急須はともかく、柄杓を使うこともなかなかできない経験だろう。
オリジナルのモナカスープは全部で13種類。このうち8種類ほどが用意されている(単品1,100円、巻き寿司とセットで860円)
ころんとしたフォルムがかわいい急須は利き手が左右どちらでも使いやすいかたち。(単品880円、巻き寿司とセットで640円)
鉄釜で沸かした湯のまろやかさを味わいつつ、竹の柄杓で湯をすくうのが楽しいからと、スープや茶を何杯もお代わりする人が続出。
北陸の地酒をリーズナブルに味わうことができると、日本酒の飲み比べができる利き酒5種セット(1,320円)も人気。日本酒に慣れていない人にも飲みやすい軽い喉越しのものから、がつんと骨太の日本酒までを飲み比べられることに加え、豆皿同様、九谷焼の猪口の華やかさに惹かれてオーダーする人も少なくないのだとか。
猪口は、九谷焼の伝統的な柄や日常にも取り入れやすい現代風な柄までさまざま。専用のスタンドが、理科の実験室のようでも。
「なんのお店ですか」と尋ねてくる人も
一見、ハイブランドのジュエリーかなにかのショップにも見える店内。よく見ると和洋のテイストがほどよくミックスした落ち着ける空間
さまざまな「初体験」や「楽しい体験」ができるCOILだが、一見しただけではなんの店かが分かりづらいのもこの店の特徴だ。通路に面した一面のガラス張りの向こう側に広がる白を貴重としたスタイリッシュな空間。何より目を引くのはぐるぐる巻かれた黒いチューブ。細巻き寿司をイメージしたものだと聞けば納得なのだけれど、知らずに訪れた人はもしかしたら飲食店であることすらわからないかもしれない。「カジュアルに味わう金沢文化」は、そんな遊び心にも溢れている。
ディナータイム限定の「スペシャルディナー(5,500円)」。8皿の具材の中にはこのメニューだけのものも。茶碗蒸しや天ぷらも一緒に味わえるほか、金沢銘菓のおもたせ付き
※価格は税込
取材日時2022年2月25日
取材・文 小杉智美
店舗情報
店舗名 | COIL |
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住所 | 金沢市袋町1-1 かなざわはこまち2F |
電話番号 | 076-256-5076 |
営業時間 | 11:00~21:30 ( L.O 20:30 ) |
定休日 | 不定休 |