金沢最深部のたこ焼き専門店「たこ焼き場― 遊楽寺」

昭和レトロな雰囲気たっぷりの金沢のディープゾーン・新天地。この場所でおよそ20年の歴史を刻む「たこ焼き場― 遊楽寺」。「場―」と書いて「バー」と読む。ちょっと小粒の柔らかい生地とあっさり目のソースで、たこ焼きもお酒も進むたこ焼き専門店だ。

昭和のレトロとほの暗さが残る新天地で営業中

遊楽寺があるのは片町スクランブル交差点からほど近い「新天地」と呼ばれる場所。昭和の雰囲気が色濃く残る飲食街だ。

片町きららの裏に広がる新天地は、客が10人も入れば広い方、中には数人でいっぱいになってしまう店が少なくない。始まりは昭和25年。店舗付き住居として整備されたところに、戦後乱立した闇市の商売人が、この場所に移り住み再スタートを切ったのだとか。

細い路地に数十軒がひしめき合う新天地商店街。初めての人はこのマップ必見!

 

遊楽寺が新天地に店を構えて間もなく20年。

「最近は『昭和レトロ』と評判になって、おしゃれな店も増えていますが、当時はまだまだ一見は入りづらい雰囲気が残っていましたね」と苦笑ぎみに話すのは店主の大久保さん。

前職は鳶で、飲食店の経営どころか勤務経験もなかったのだという。

小料理屋といっても遜色ないような、落ち着いた雰囲気の店内

 

「母親をはじめ周囲には心配の声もありましたが、自分の手の届く広さがいいなと思って。商店街の人はあたたかくて、オープン当初からいろいろとお世話になりました」

昭和レトロな商店街は、人の気質も昭和のあたたかみにあふれているようだ。

 

 

 

焼きたてのたこ焼き×冷えたドリンクの無限ループ

遊楽寺のたこ焼きは、大久保さんいわく「もともと自分がたこ焼き好きで、友人にふるまったり、知り合いのイベントで焼いていた頃からほとんど変わっていない、本当に、申し訳ないくらい『普通』のたこ焼きなんです」。

大久保さんのいう『普通』とは、揚げ焼きのカリカリ感や口の中でとろけるふわとろ感、独特な具材を使っているなど、最近流行の変わり種ではないという意味らしい。

 

山芋をブレンドした生地に、具材はタコと紅ショウガと、確かに至ってシンプルなたこ焼きだ。だが、口当たりも味わいもふんわり柔らかいそのたこ焼きは、日本人が慣れ親しんだ懐かしい味に間違いない。

小ぶりのたこ焼きの中には、大き目にカットされたタコが

 

たこ焼きを焼くのは、もちろん注文を受けてから。店内にたちこめる香ばしい香りを肴にまずは一杯。

たこ焼きが焼けたら、出来立てを口の中に。

熱々のたこ焼きをハフハフと熱を逃がしながら飲み込むと、ドリンクで口の中の熱を冷ます。口と喉が冷えると熱いたこ焼きが欲しくなる。熱々をドリンクで冷ます……の無限ループが楽しめる。

 

 

たこ焼きがシンプルなら、メニューもシンプル。存分にたこ焼きが味わえる

 

基本のたこ焼き。オリジナルブレンドのソースはあっさり目。テイクアウトOK

 

たっぷりの大根おろしとポン酢のさっぱり感がたまらない。おろしポン酢はテイクアウトできないので、熱々を店内で!

 

 

 

遊びにくる感覚で訪れてほしい

「遊楽寺」という店名の由来は、「遊びに来る感覚で楽しんでいってほしい」という意味が込められている。たこ焼きは、もともと友人にふるまっていた得意料理だ。「おいしい」と評判になり、店を持つまでになっても自分の料理が楽しい時間の供になってほしいという思いは変わらない。

そして、店名の由来はもうひとつ。大久保さんの見た目だ。当時からスキンヘッドにしていた大久保さん。友人の一人が冗談交じりで「寺」をつけたらどうかと提案したのだそうだ。

カウンタ上に仏具がたくさん並んでいるのも「遊び心」。多くは友人のプレゼントだとか

そんな遊び心ともてなし心がたっぷりの遊楽寺では「たこ焼き大食いチャレンジ」がふんわりと実施中だ。現在のトップは112個。更新すると次回訪問の際に使うことができる「12個サービス券」が発行される。

ただし「ガチのフードファイターの人が、来るたびに1個ずつ更新すると、経営の危機になるので、それはやめてください」。大久保さんからのおちゃめかつ切実なお願いなので、チャレンジする際は、余白を残さず全力で楽しんで!

 

 

笑顔がとてもチャーミングな店主の大久保さん

 

 

 

 

※価格はすべて税込み

 

取材日時 2024127

 

取材・文 小杉智美

店舗情報

店舗名 たこ焼き場― 遊楽寺
住所 金沢市片町2-3-26
電話番号 090-5175-1093
営業時間 19:00~翌3:00
定休日 日曜、第3月曜