オープンからわずか1年でミシュラン掲載の話題店「Paolo(パオロ)」
野町広小路の交差点から徒歩数分のところにあるイタリア料理店「Paolo(パオロ)」。厳選食材とていねいに仕込んだ自家製パスタなどオーナーシェフのこだわりと愛情がたっぷり詰まった本格イタリアンが堪能できる。
ここは金沢? それともイタリア?
店の構えは純和風。金沢の風情に溶け込む大正時代に建てられた町家に、入り口に掲げられたのれんのイタリア国旗の3色が映える。店の前を流れるのは1705年に開通した泉用水。店には、そこに架かる小さな橋を渡って入る。
いかにも『金沢』らしいロケーションを味わいながら店内に一歩進めば……。
テラコッタタイルの床と高い天井、明るいオレンジ色の壁、セミオープンのガラス張りになったキッチンから漂う香りと、目に飛び込んでくる印象のあまりの変化に一瞬、脳が混乱する。
大正時代に建てられたという店舗外観は、静かに街並みに溶け込んでいる。
ここは、2020年のオープンからわずか1年でミシュランガイド北陸2021でミシュランプレートを獲得したイタリア料理店「Paolo」。その肩書がなくとも地元のグルメはもちろん、この店の味を求めて日本に住むイタリア人が遠方からも訪れる人気店だ。
「ここはどこ?」みたいな顔で思わず立ち止まる人もいるのだという明るく開放的な店内。奥に見える和風の坪庭も粋。
慣れ親しんだはずのパスタとの新鮮な出会い
メニューはランチ、ディナーともにコースが基本で、提供されるのはすべて自家製の生パスタ。その日の気温や湿度に配慮して丁寧に仕込んだパスタは、もちもちの歯ごたえ。スパゲティなど、日本人にも馴染み深いロングパスタだけでなく、日頃あまり目にすることがない変わったパスタにも出会うことができる。
慈しむようにやさしく成形されるパオロのパスタ。
イタリア語で「女王」の意味を持つレジネッテは華やかなドレスのフリルのような形が特徴。このフリルと表面のザラザラにレソースがよく絡む。パオロの女王様は門外不出のオリジナルレシピで打たれているのだとか。
パスタもそうなのだけれど、パオロの料理はどれも香りが抜群にいい。秘密をオーナーシェフである植田直樹さんにたずねる。
少しだけ考えて返ってきたのは「うーん、必要以外のものが入っていないからでしょうか」というシンプルな言葉。
白い皿に映える色使いも美しい料理は、見ているだけで華やかな気分になる。
パオロで提供される料理に使われる食材や調味料は、多くはイタリアから取り寄せられた「本場」のもの。特にD・O・P(原産地名称保護制度)などの審査を受けた伝統と品質、文化を厳しく守って作られたものだけを厳選している。加えて生鮮品は地元で獲れるものを多用する。
生鮮品に地元素材が多いのは、獲れてから短時間で調理ができること、そのため味や栄養が多く残ることが理由だ。
そうやって選び抜いた食材を丁寧に仕込んでいるからこそのシンプルな返答だったのだろう。品質の良さを「何も足さない、何も引かない」と表現してヒットしたCMのフレーズを思い出した。
ランチ、ディナーともにコースで提供される。パスタは日替わりで数種類から選ぶことができる。
イタリアでも失われつつある伝統を金沢で継承する
植田さんに料理人として大切にしていることをたずねた。
一番はもちろん「お客様においしい料理を提供すること」だがもう一つ。
「イタリア料理の基本は各家庭で手間ひまかけてお母さんが作ってくれる料理です。パスタの種類が多いのも、地域ごとに特色があるのもルーツは『マンマの味』。それが少しずつ消えつつある。僕はイタリア人ではないけれど、イタリア料理にたずさわる者としてその伝統の味や製法、文化を守り伝えていくことを常に心がけています」。
丸くカットしたコイン型の生地に判を押すように模様をつけたコルツェッティ。他ではなかなかお目にかかれないパスタのひとつ。
そう話す植田さんが使う道具や、作り出すパスタは、若いイタリア人シェフも知らないものが多いのだとか。
中でもコイン型のパスタ コルツェッティの木型は本場でも使う人が少ないのだという。かつては家紋などが彫り込まれ、一族の記念日などに使われたといこの木型を彫る職人は現在、イタリアにも一人を残すのみという超貴重品。植田さんも「一生の宝もの」とうれしそうに笑った。
取材日時2022年5月18日
取材・文 小杉智美
店舗情報
店舗名 | Paolo(パオロ) |
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住所 | 金沢市白菊町19-7 |
電話番号 | 076-227-9909 |
営業時間 | 11:30~15:00(L.O.14:30)、18:00~22:00(L.O.21:30) |
定休日 | 日曜、第1・3月曜 |