集った人が仲良くなれる場所

「お酒の締めは何にするか」と尋ねれば、定番は「ラーメン」だろうか。あるいはあっさり「お茶漬け」か。締めなどといわずに、とことんまで飲みたい人も多いだろう。ここ数年人気が高まっている感が高いのは「甘味、スイーツ」ではないだろうか。

片町にあるお座敷バー「籠」はそんな、最後まで飲みたい人も、締めに甘いものを食べたい人も満足できる場所だ。

というのは、「籠」の看板メニューのひとつが甘味。

お酒好きな人はグラスを傾けながら、苦手な人はお付き合いのお茶やジュースではなく、お団子やわらび餅をつつきながら。そんな風に過ごすことができれば、会話もはずんで、距離も近づく。かもしれない。

「お座敷」の名の通り、靴を脱いでくつろぐスタイルの店内。隠れ家のような雰囲気も漂う

「この店は、不思議なご縁がつながってオープンしたんです」とオーナーの西野さんが言う。もともとアパレルショップスタッフだった西野さんは、抜群のコミュニケーション力で客とは友人のような付き合いをしていたのだそう。「そんな友人同士が一緒に楽しめる場所があればいいな」と思っていたところ、恩人の紹介で「籠」が誕生した。

聞けば、お酒を飲むのは好きだったものの、さほど詳しかったわけではなかったのだとか。「オープン準備とお酒の勉強を並行して、急ピッチで進めました」。そう振り返る。

抜群のコミュ力とかわいらしい笑顔で、密かなファンの多い西野さん

金沢らしい和のテイストを感じながら、カクテルを傾けるのもよし

「今は何でもネットで見ることができる時代。店のメニューも訪れる前に全部わかっちゃったら面白くないので、来てからのお楽しみメニューを作りました」

お楽しみメニューは、バーを始めてから好きになったという日本酒。「自分が好みの味」から「ネーミングがおもしろい」ものや「ラベルがかっこいい」もの、ときには入手困難な限定品まで、3～5種類をその時々でチョイス。

場所柄、観光客も多く訪れることから、地酒は知名度を問わず隠れた名酒まで、地酒を知り尽くした地元客にも楽しんでもらえるよう、全国の酒蔵から選んだものをその都度揃えている。

人気のあのアニメのキャラクターの名前を持つ日本酒。名前のインパクトだけでなく、そろってモンドセレクション金賞を受賞している

つまみの人気は「炙りシリーズ」。エイヒレとアジ、カレイからチョイスできる

コロナ禍から生まれた夜の甘味処

この店で甘味を出すようになったきっかけは、コロナ禍の営業制限だったという。当初は、日中の営業時間だけの提供だったが「夜も食べたい」という声が多かったことから「BAR&甘味処」としたのだという。

自分で炙って食べられる団子や本わらび100%のわらび餅、抹茶ブラウニーに濃厚なショコラテリーヌなどを厳選し、ドリンクもこだわった。

「特に丸八製茶場の献上加賀棒茶は、直接おいしい淹れ方を教わってきました」。

七輪で焼く「炙りお団子セット(単品1,100円、ソフトドリンク付き1,430円)は、自分で団子を焼くことができるのが楽しい

「濃厚ショコラテリーヌ(単品990円、ソフトドリンク付き1,430円)」は、赤ワインとのセット(2,200円)もおすすめ。

深夜に本格的な甘味を出す店は、金沢では意外に少ないようで、酒好きだけでなく、甘味好きや、酒は飲めないけれどバーの雰囲気が好きだという人が集まる店としても、存在感を高めている。

バーの向かいにはイベントスペースも

西野さんがオーナーを務める店がもう1軒。

「籠」と通りを挟んだ向かい側の地下1階にある「excAve(エクスケイヴ)」だ。

ここは、ある時はライブハウス、ある時はセミナー会場や貸し切りパーティルーム、個展会場だったり、パプリックビューイング会場だったり。最大100名(スタンディング)が利用できる多目的なレンタルのイベントスペースだ。

地下1階にあるため、防音対策もばっちり。何より「籠」にドリンクや食べ物をオーダーすることもできる。

レンタル料金や内見、イベントに関するお問い合わせはSNSやウェブサイトで確認できる

「自分が楽しいと思えることをやっていたら、周囲の人が助けてくれて、それがこの店の核になっています。そもそも自分にとってこの街は、若い頃からたくさん遊んできて、仕事もしてきた。そのときにたくさんの大人に応援してもらったし、お世話になった。今度は、この店を通して周りの人たちやこの街に恩返しをしたい、応援する側になりたいと思っています」という西野さん。バーからバー&甘味処へ、イベントスペースへ。これからも「籠」はどんどん変化していきそうだ。

【Instagram】

お座敷BAR&甘味処 籠　:　 https://www.instagram.com/ozashikikago/

excAve：https://www.instagram.com/excave.kanazawa/

※価格はすべて税込み

取材日時　2023年4月14日

取材・文　小杉智美

店舗情報

店舗名	お座敷BAR & 甘味処 籠
住所	金沢市木倉町5-13
電話番号	076-210-5553
営業時間	月・水・木曜20:00〜翌2:00、金・土曜20:00〜翌3:00、日曜19:00〜24:00 (日によって変動あり。詳細はSNSで確認を)
定休日	定休日　火曜、不定休(詳細はSNSなどで確認を)