創業から50余年。石川県民のソウルフード「8番らーめん」
石川県民に50年の長きにわたって愛されるラーメン専門店「8番らーめん」。金沢駅店はその名の通り、金沢駅構内にあるグルメ、お土産スポット「あんと」の中に堂々と並んでいる。
まさに「なんでやろ8番」。体が8番らーめんを欲する
生まれも育ちも石川県という人の中には「今日はラーメンが食べたいんじゃない。8番らーめんが食べたいんだ」という人がいる。かくいう私もその一人で、他の食べ物では代用できない欲求を喚起するのが8番らーめんだ。それほどまでに8番らーめんは石川県民にとってのソウルフードとも言える存在。
テレビCMのキャッチフレーズ「なんでやろ8番」はまさにそういう石川県民の心の声を代弁していると言える。
8番らーめんが誕生したのは1,967年。1号店は、加賀市の国道8号沿いの25席の店だったのだとか。
店名は、その創業の地である国道8号にちなんでいる。
現在でも一番人気の野菜らーめんは、創業当時からの看板メニュー。たっぷりの炒め野菜を乗せた太麺では、ラーメンの手軽さに野菜の栄養をプラスした食べ物として、創業者が考案したのだという。関東の人には、タンメンに似たラーメンだと言えばイメージしてもらいやすいかもしれない。
国道沿いというアクセスの良さも、地元の人はもちろん、長距離トラックの運転手なども立ち寄りやすいと評判になり、一日1,300杯を売り上げる人気店としてスタートしてから50年あまり。8番らーめんは、定番ラーメンとしてはもちろん、石川県民のソウルフードとして定着している。
創業当時の1号店。店名は初め「らーめん」ではなく、カタカナで「ラーメン」(画像提供:株式会社ハチバン)
霊峰白山の伏流水が練り込まれた自慢の“太麺”
創業時から、今も変わらない8番らーめんの看板メニューである野菜らーめん(637円)は、またの名を「太麺」という。もちろん正式な名称ではない。野菜らーめんに使われている麺が太い縮れ麺であることからの愛称だ。
この太麺をはじめ、野菜らーめんには、8番らーめんのこだわりが凝縮されている。
川北町にある自社工場で作られる麺は、厳選された小麦粉と霊峰白山の伏流水でこね上げられ熟成されることで独特のコシとシャキシャキの炒め野菜と一緒にほおばっても負けない食感が生み出されるのだそう。
スープの味の決め手である塩は、久米島沖の海洋深層水から生まれた球美の塩に沖縄の塩をブレンドした特製。野菜らーめん塩だけでなく、すべてのメニューを支える立役者だ。
炒め野菜は100%国産を使う。中でもキャベツは、野菜らーめんの主役のひとつとして、全国各地で農家とテスト栽培を繰り返し選定したものだという。
「太麺、塩で」「私は太麺の味噌」などとオーダーすれば、ちょっと通な気分が味わえるかも。
そしてもうひとつ。
これがなければ8番らーめんは完成しないとまで常連客に愛されているのが丼の中央に鎮座するカマボコ。通称「ハチカマ」。
白地に赤い色で8と描かれたハチカマは、創業の翌年からの8番らーめんのトレードマーク。材料のスケソウダラは、魚の皮の混入が少ない白い部分を厳選して8の時の赤を際立たせる。赤い色はトマトやパプリカなどの野菜から抽出した天然素材を使っている。2.5㎜に統一された厚みは、ハチカマのぷりぷりした食感を存分に楽しめるように計算されたものだ。
その人気ぶりは、8番らーめんのマスコットキャラクター・ハチコがハチカマをモデルにしていることからもわかっていただけるはず。
マスコットキャラクターのハチコ。季節や商品にちなんだコスプレ(?)姿も披露している。
いつでも誰とでも食べられるのも8番らーめんの大きな魅力
味や素材、おいしさの追求と、8番らーめんのこだわりをご紹介してきたが、このラーメン専門店のもうひとつの大きな魅力が「いつでも、誰とでも食べられる」ことだろう。
席はくつろぎやすいボックス席が多く、野菜らーめんだけでも、人気ツートップの塩と味噌を筆頭に、醤油、とんこつ、バター風味の5つ味が用意され、これに唐麺(712円)や担々麺(820円)などの個性的な麺類が並ぶ。
このほか、夏場の冷めん(799円)にざるらーめん(648円)、8月30日~9月末まで一ヶ月だけの野菜トマトらーめん(840円)、冬の定番酸辣湯麺など、期間限定ではあるけれど、季節の風物詩的存在のメニューが加わる。
2年前の初登場時はあっという間に売り切れになったヒット商品の「野菜トマトらーめん」。今年は9月末までの期間限定。
サイドメニューも豊富で、あっさりとした味わいでセットメニュー一番人気の8番餃子(270円)、がっつり食べたい人にはチャーハン(580円)、鶏の唐揚げ(432円)、春巻き(302円)など、その日の気分とおなかの減り具合で好きな組み合わせを楽しめる。
ちなみに、野菜らーめんをはじめいくつかのラーメンには、大盛りはもちろん、麺の量が1/2の「小さな」シリーズも用意されている。
小食やダイエット中の人、太麺を食べたい子どもにぴったりの量だ。
定番のサイドメニュー三種。中でも8番餃子はほとんどの人がオーダーするほど。
一日600杯を売り上げる金沢駅店は観光客にも人気の行列店
石川県内に51店舗、全国には120店舗あまりを展開する8番らーめんの中でも、金沢駅構内のあんとにある金沢駅店は、観光客にも人気の店舗。一日に600杯を売り上げ、時には10時の開店を前に行列ができることもある。
金沢駅店店内。ボックス席は高めの背もたれで隣席とやわらかく隔てられ、くつろげる空間を作っている。
店長の秋澤陽一さんは「駅の中にあるということは、県外はもちろん、最近は海外からのお客様も多くいらっしゃいます。金沢に来てはじめての食事が8番らーめんという観光客もいます。金沢の第一印象が自分たちの接客で決まるということを常に意識しています」と話す。「その方たちにこれからの金沢観光を心から楽しんでいただけるよう、金沢はいいところだと思っていただけるような接客を心がけています」とも。
場所柄、観光客が多いとはいえ、金沢駅店も地域に根ざし、たくさんの常連客に愛されているのは言うまでもない。
店長の秋澤さん。英語と中国語も話せるので、外国人観光客の接客も万全だ。
※価格はすべて税込み
取材日時2019年8月9日
取材・文 小杉智美
店舗情報
店舗名 | 8番らーめん金沢駅店 |
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住所 | 金沢市木ノ新保町1-1金沢百番街あんと1F |
電話番号 | 076-260-3731 |
営業時間 | 10:00~22:00 |
定休日 | なし |