レトロ感のある看板もこの店の味わい深さのひとつ

実はまかないメニューだった

「ハントンライス」といえば、ケチャップライスの上に卵、卵の上にフライが乗った洋食。オムライスにも似ているが、フライが乗っているところ、上にケチャップだけでなくタルタルソースがかかっているところが大きな違いか。

最近では「金沢グルメ」「ご当地グルメ」として人気のある、地元の人間にとっては「ソウルフード」ともいえる一品だ。

金沢にハントンライスを出す店はたくさんあるが、中でも行列が絶えない店のひとつが「グリルオーツカ」。

観光客が多い週末だけでなく、平日も小路にも行列を見ることがある程だ。

金沢人の舌を半世紀以上、喜ばせているハントンライス(普通盛1,150円)

オーツカのハントンライスといえば、ご飯はシンプルなケチャップライス。玉ねぎの甘みとケチャップの甘酸っぱさがしっかりと感じられる。フライはカジキマグロ、卵は1人前に3個使う。ちなみに、フライは焼いた卵の上に「乗せる」のではなく、卵と一緒に焼いているのもオーツカの特徴。ご飯の上に盛り付けた時に、フライが転げ落ちないようにしているのだという。仕上げにかけるタルタルは、ケチャップとのバランスを考えて、あっさりとまろやかな酸味に整えた自家製。

実はオーツカのハントンライスは、もともとまかないだったのだそうだ。手早く作ることができて、さっと食べられるのがまかないなのだから、シンプルなのも納得だ。

ランチには店の歴史とおいしさがぎゅっと詰まっている

ハントンライスがあまりにも有名になっているけれど、グリルオーツカは金沢で50年以上の歴史を刻む洋食店だ。

それを体感できるのが「ランチ(1,050円～)」。A、B、Cと毎日3種類が提供され、メニューには、割ると肉汁があふれ出るハンバーグやたっぷりの具ととろとろのホワイトソースが味わえるグラタン、サクサクの衣をまとったエビフライにコロッケなど、グランドメニューに並ぶ料理が日替わりで食べられる。

近くで働く人々の胃袋と活力を満たしてくれるランチ (Aランチ1,050円)

常連客が口を揃えておすすめするのが、ランチにもセットされる「クリームスープ(単品580円)」。しっかりと出汁の効いたブイヨンに、玉ねぎや香味野菜の甘みと旨味が渾然一体となったやさしい味わいは、ファンがとても多い逸品。クルトンではなくコーンフレークが乗っているのもオーツカならではの仕様だ。

思わず懐かしさを感じる店内。一角に置かれた本棚からも、地元の人に愛されてきた店だと感じられる。

メニューに「スパゲッティ」があるのも老舗洋食店らしいラインナップ。昭和32年の創業の頃は、日本にはまだイタリアンの専門店が少なかっただろう頃。海外発祥の「ハイカラ」な食べ物はすべて「洋食屋さん」の守備範囲だったのだろうことがうかがえる郷愁を誘うメニューといえるかもしれない。

パスタは2品。シーフード入りのトマトソースがかかった「ナポリ風スパゲッティ(1,050円)」と「ミートソーススパゲッティ(1,050円)」。

どちらも「日本の洋食屋さん」でしか食べられない味わい。

ミートソーススパゲッティはデミグラスソースがベース

いつ訪れても初めてでも、家族のような笑顔で迎えてくれる

グリルオーツカの厨房を切り盛りする大塚正樹さんは3代目。客前に顔を出すことは少ないが、祖父の代から続く味を大切に伝えている。

フロアを仕切っているひとりが母親の節子さん。客のオーダーに対しても「ウチは量が多いよ。小さめがいいんじゃないの」なんて声をかけるまさに店のお母さん。

ちなみに、ハントンライスに「小」ができたきっかけは正樹さんだ。「普通サイズの量が多いのはウチの名物みたいなものでしたが、食べきれない人も少なくありませんでした。もったいないという気持ちと、残す人も申し訳無さそうな顔をされるのが、逆に申し訳なくて」。

それでもなかなかの量なのだが、そんな経緯もあって節子さんが声をかけるのだそうだ。

ここに正樹さんの妻であり、グリルオーツカのSNS担当でもある真衣さんが加わった3人が店の要だ。

この3人を中心に、スタッフが気持ちいい笑顔で迎えてくれるのが、70年守り伝えられている味以上にグリルオーツカの魅力なのかもしれない。

左から、真衣さん、節子さん、正樹さん。

Instagram ：https://www.instagram.com/grill_otsuka/

※価格はすべて税込み

取材日時　2023年2月21日

取材・文　小杉智美

店舗情報

店舗名	グリルオーツカ
住所	金沢市片町2丁目9-15
電話番号	076-221-2646
営業時間	11:00〜15:30 / 17:00〜20:30(19:50L.O)
定休日	水曜(不定休あり)