江戸時代初期に創建された寺の本堂でほっこりとくつろぐ「宝勝寺カフェ」
宝勝寺カフェは、臨済宗の寺院・宝勝寺の本堂の一角にあるカフェ。金沢市を流れる犀川の南西、にし茶屋街からもほど近い寺町寺院群にある。金沢の和菓子をはじめ、地元の老舗茶舗の香り高い加賀棒茶、珈琲、紅茶、和洋甘味、軽食など豊富なメニューを味わいながら、能筆で知られる髙橋友峰住職の書も堪能できる。
国の登録有形文化財にも指定されている犀川大橋から南に歩いて5分ほど。旧鶴来街道の入り口・蛤坂を南に進んですぐ左手に見えてくるかわいらしい看板と鮮やかな旗が宝勝寺カフェの目印。
前田利常公が開いた臨済宗の寺院でカフェタイム
宝勝寺カフェのある寺町は、文字通り約70もの寺院が立ち並ぶ「寺のまち」だ。1600年代初頭に、加賀藩主である前田家が金沢城の南側の守りとして寺院を集めたのがその起こり。宝勝寺は、臨済宗の寺として1631年に創建され、前田家に仕えた上級武士をはじめ、相模の北条家、尾張の織田家、美濃の津田家など、諸国から来仕した名武将の菩提寺として栄えた。現在もほぼ当時のままのつくりを残している。
山門をくぐると右手が本堂。入り口にかけられた小さな鐘を鳴らすのが訪問の合図だ。出迎えのスタッフが、席へと案内してくれる。
席が設けられているのは、左右に十六羅漢を従えた十一面観音を本尊仏とする本堂の次の間と茶室。
和洋折衷のテーブル席と火鉢をテーブルにした風情ある畳席の2種類。どちらを選んでも、開放感のある高い天井と障子越しに差し込む陽の光が感じられて心地いい。
席と席の間も広くとられていたり、ついたてでやんわりと隔てられているため、あまり周囲を気にすることなくくつろげてしまう。
人気は季節の和菓子のセットや地元の老舗茶舗の棒茶
場所柄か、人気メニューは金沢の老舗菓子舗の生菓子と干菓子が味わえる金沢銘菓三種盛り合わせのセット(1000円)。飲み物は抹茶と加賀棒茶から選ぶことができる。抹茶は金沢らしく金箔入り、棒茶は寺町の茶舗の香り高い浅煎りが使われている。
とはいえ豊富なメニューは、和甘味にとどまらない。ココアやカフェラテをはじめとしたラテ類(各500円)、6種類から選べる紅茶(各400円)、一番人気のクリームあんみつ(700円)、フォンダンショコラ(600円)などのスイーツに加え、カレーライス(800円)、加賀棒茶の焼きおにぎり茶漬け(1000円)などバラエティも豊か。
中でも、由緒ある寺院の本堂の一角で、仏様の気配を感じながらカレーライスを食べる機会はなかなかできないだろう。そんな、一見アンマッチなものも包み込んでくれるのが寺カフェの良さなのかもしれない。
寺カフェは御仏の教えにかなうもの
カフェが人気を集め始めてから、さまざまなタイプのカフェが登場している。古くからの甘味処も和カフェと呼ばれるようになって、寺院や神社にカフェが併設されるところも増えてきているように感じる。
ただ、本堂の一角がそのままカフェになっているのは、全国でもそう多くはないだろう。御仏が座する本堂は、神聖なもの。そこで飲食をするというのは、いわゆる「バチが当たる」のではないかと感じる人もいるのではないだろうか。
そうたずねると、カフェのいわれを教えてくれた。
仏教発祥の地であるインドでは寺院のことをビハーラと言う。ビハーラとは「憩う、安らぐ、休養する」という意味を持つのだそうだ。本来の寺院は人々が集い、憩う場所として開放され、親しまれてきたのだという。その現代版がカフェなのかもしれない。
現代のビハーラを実現させたのは福井県福井市生まれの髙橋友峰師。現在、大安禅寺と宝勝寺の住職を兼任している。
髙橋住職の法話は、仏教の教えがわかりやすく日常生活にも取り入れやすい、「楽く楽く法話」として評判が高い。20名からの参加と事前申し込みが必要だが、宝勝寺でもその法話を聞くことができる。
多才な髙橋住職は、書家としての評価も高い。全国をはじめパリやニューヨークでも個展を開いたほか、2019年4月にはフランスのサンリス市で開催される芸術祭での墨跡パフォーマンスも行う。
カフェ内にも住職の書がいくつも飾られているので、書跡を眺めながら、書かれた文字の意味を考えながら、ゆっくりと時間を過ごすのもいいだろう。
※価格はすべて税込み
取材日時2019年3月6日
取材・文 小杉智美
店舗情報
店舗名 | 宝勝寺カフェ |
---|---|
住所 | 金沢市寺町5-5-76 |
電話番号 | 076-287-3870 |
営業時間 | 10:00~16:00 |
定休日 | 火(法要などで休む場合あり) |