紅茶専門店「TeaHouseSAKURA」は金沢の紅茶文化をリードする貴重なティーハウス
金沢市武蔵町にある紅茶専門店「TeaHouseSAKURA(ティーハウスサクラ)」。他のカフェとは一線を画す、特殊なメニューのシステムをわかりやすく解説します。世界中に愛好者の多い「ムレスナティー」の魅力や、パンケーキなど人気メニューもご紹介。紅茶ひと筋のマスターが金沢の喫茶業界への挑戦、決意と信念について熱く語る。
「TeaHouseSAKURA(ティーハウスサクラ)」は近江町市場の向かい、百貨店めいてつエムザの路地裏を2分歩いた先にある。古民家が多い界隈で店の目の前まで行かないと見えない、まさに隠れ家カフェだ。
紅茶を何杯も飲める「サクラ」のシステム
「ティーハウスサクラ」ではホットストレートティーが基本だが、メニューに茶葉のリストはない。しかも、紅茶一杯だけで客を帰すことがまずないという。
「無理してたくさん飲む必要はないので、色んな香りの紅茶を楽しんでほしい」と話すのは、「ティーハウスサクラ」マスターの櫻井嘉紀さん。
まず温めたティーカップが置かれ、紅茶が注がれる。
カップが空になると別の紅茶を注いでもらえて、3~5種類の紅茶を飲むことができるのだ。
櫻井さんはこのシステムを「ホットティー色々」という呼び方で表現。
初めてきた客に丁寧にメニューの説明をすることから、櫻井さんの一日が始まるという。
金沢で「ムレスナティー」の魅力を伝えたい
櫻井さんは和歌山県出身で、好きなものは猫と食べること、そして紅茶だ。自他ともに認める立派な紅茶オタクだが、なんと以前は紅茶が苦手だったそう。「特に香りつきの紅茶が苦手でした」と話す。
そんな櫻井さんが「ムレスナティー」に出会った途端、紅茶に対する概念がガラリと変わったという。聞き慣れない名前だが「ムレスナティー」には多彩なフレーバーが100種類以上もあり、世界中に愛好者が多いそう。櫻井さんは店内に常時50種類ほどの茶葉の在庫を持っている。
「ティーハウスサクラ」では季節やフードに合わせておすすめのものを、櫻井さんが選ぶ。店内に並ぶ色とりどりのフレーバーティーの中から、茶葉のリクエストを受けつける時もあるそう。
「ひと口で僕を紅茶ファンに変えてしまったムレスナティーの魅力を、皆さんにもぜひ知ってほしい」という想いから店をオープンさせ、櫻井さんの長い道のりが始まった。
何杯でも飲める!まるで紅茶のフルコース
「ホットティー色々」で5種類の「ムレスナティー」をいただいてみたところ、この日はこの順番で淹れてくれた。
◆洋ナシのおいしい紅茶
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◆いちじくとキャラメル
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◆犀川のせせらぎ(オリジナルブレンド)
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◆幸せの鐘(アップル・シナモン)
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◆純・白桃
最初、カップの中の「ムレスナティー」は一般的な紅茶よりも色が薄いように見えた。が、口に含むと華やかな香りがものすごい勢いで押し寄せ、喉に優しい潤いがなめらかに通りすぎていく。自然とゴクゴク飲んでしまって、すぐにカップが空になった。
「5杯分飲まれる予定で少な目に入れてますが、もっと飲めそうなら気軽に言ってくださいね」
一瞬で飲み干されたカップを見て次の茶葉を淹れ始めた櫻井さんが、そう声をかけてくれる。
思えば、この店では諸事万端、このような気配りが感じられる。
普通ならおかわりがあったとしてもポットで提供され、2~3杯目は冷めてしまうことが多いが、「ティーハウスサクラ」では5杯とも熱々の淹れたて!料理を待つ間も優雅な気分に浸っていられるのが嬉しい。
通常の紅茶で考えると「とても5杯も飲めない」と心配だったが、この「ムレスナティー」を飲むと、「意外と喉が渇いていたんだな」と気づく。
「もう一杯、大丈夫ですか?」と聞いてくれる櫻井さん。次から次へと注がれる紅茶の香りを楽しみつつ、すべて飲み干せている自分に、自分が一番驚きだった。聞けば、ムレスナティーは通常の紅茶とは違ってタンニンやカフェインが少なく、麦茶感覚で飲める。散歩や買い物途中の水分補給に持ってこいだそうだ。
紅茶ありきのマスター特製フードメニュー
「すべてに納得した自信作しか店には出せない」と言う櫻井さんが作るフードメニューは、お腹を空かせてやってきた多くの客に常に好評を得ている。
「飯がウマいと言っていただけるのはもちろん嬉しいのですが、それぞれのメニューに合った紅茶を選んでお淹れするので、紅茶との組み合わせを楽しんでほしい」
どこまでも紅茶一筋の櫻井さんらしい言葉だった。
金沢に紅茶文化を!櫻井さんの終わりなき旅
「ティーハウスサクラ」に初めて店を訪れる人のほとんどが「ムレスナティー」初体験なのだそう。「ムレスナティーどころか、お店で紅茶を楽しむという文化が金沢にはほとんどないですよね」と櫻井さんは話す。「金沢は圧倒的にコーヒーの街で、茶道に嗜みのある人も多い。そこに、紅茶が入る余地を作りたい」
2014年に「ティーハウスサクラ」を開店して以来ずっと、櫻井さんの想いは変わらない。
「コーヒーや日本茶にもそれぞれのよさと歴史があるので、ひっくり返そうとか思ってる訳じゃない。いいものをいいと思ったから、伝えたいだけなんです」。
まずは店に来てくれた人1人1人にくつろいでもらって、おいしい「ムレスナティー」で喜んでもらう。その人が、また別の客を連れてくる。そうやって店を続けてきたのだと話す櫻井さん。
紅茶のカラフルなパッケージは贈答用に買って帰る人も多いそう。
「それを貰って気に入った人が足を運んでくれることもあります。そうやって一歩ずつやっていくしかない」
日々優雅なサービスを提供しながらも、開拓者としての彼の戦いに、いまだゴールは見えない。
今日も櫻井さんは店に立ち、お湯を沸かすのだ。
※価格はすべて税別
取材日時 2019年3月8日
取材・文 廣中 恵
店舗情報
店舗名 | TeaHouseSAKURA |
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住所 | 金沢市武蔵町9-15 |
電話番号 | 076-261-5570 |
営業時間 | 11:00~20:00(L.O 19:30) |
定休日 | 火曜日(祝日は営業) |