日本茶カフェ「茶fe」で疲れた体と心にひと息入れて

「上林茶舗」店内にある日本茶カフェ「茶fe(ちゃふぇ)」は、近江町市場からひがし茶屋街方面に歩いて5分。隣近所の商店から一歩引いた造りで、控えめかつ上品な店構えだ。

裏通りにひっそりとたたずむ「茶fe

何とも言えないお茶のいい香りが漂う「上林茶舗」店内にある「茶fe」。

 

「茶fe」スペースはカウンターが4席とテーブルが2つのみ。

 

ウェルカムティーの冷たい加賀棒茶。

 

メニューに目を通し床の間を眺めていると間もなく、冷茶が提供される。

石川県民の愛する棒茶(=茶茎のほうじ茶のこと)でさっそく、乾いた喉を潤すことができた。

まるで茶室に招かれた客人に対するようなもてなしが、心をくすぐる。

 

 

お茶のプロ厳選!「茶fe」のメニュー

写真は、加賀棒茶と上生菓子のセット。

 

「茶fe」のお茶メニューは、以下の通り。

・抹茶(400円。セットは660円)

・煎茶(350円。セットは550円)

・加賀棒茶(同上)

・加賀の紅茶(同上)

(※セットメニューは、上生菓子or加賀の紅茶ブリュレが選べる。)

 

 

「茶fe」がある「上林茶舗」は今年で創業70年。店内には老舗らしい落ち着いた空気が流れている。

お茶の保管に使われる木箱を茶櫃(ちゃひつ)と呼ぶのだが、歴史を感じさせる昔からの茶櫃が今も現役で茶葉の保管に使われている。

レジの奥にはズラリと茶櫃が並ぶ棚が見える。

 

 

街歩きに疲れた人が休憩できるように

昔からこの場所で日本茶の商いを続けてきた「上林茶舗」が、「茶fe」をオープンさせたのは、2012年。

「その頃は、この近くにはカフェが全然なかった」と話してくれたのは、織田総(おだ・そう)さん。

「仕事や観光で歩き疲れた人達に、ちょっと座ってお茶を飲める場所を提供したくて」、カフェスペースを作ることにしたのだという。

大通りから一本入った静かな通りにあるこの「茶fe」は、通りすがりの観光客や茶道家、和菓子目当ての人などがポツポツと立ち寄る場所になっている。

上林茶舗」店を継ぐ3代目オーナーの織田さん。

 

 

「茶fe」ならではの上質スイーツセット

「茶fe」ではお茶とセットで提供するスイーツにもこだわりがある。

・地元金沢でも「幻の和菓子店」と呼ばれる、「吉はし」の上生菓子

・フランスから功労賞を得ているフレンチの川本紀男氏が特別に製造した、加賀

 紅茶ブリュレ

・夏季限定!本場イタリアで数々の受賞歴を持つ「マルガージェラート」の「茶fe」限定フレーバ

 ーである、お茶のジェラート

 

小規模な「茶fe」でこれだけのスイーツ有名店とのコラボが実現したのは、いずれも織田さんの人脈あってこそだ。

 

「茶fe」ではスイーツに最高に合う銘柄のお茶をセットで楽しめる(スイーツのみの注文は不可。夏季メニューのジェラートは単品でも注文可)。

特に人気No.1メニュー「抹茶セット(660円)」の抹茶は、上生菓子の上品な甘さに合わせ「茶fe」用に特別限定生産しているというこだわりぶりだ。

 

また「茶fe」では日本茶だけでなく、このようなメニューも選べる。

・珍しい石川県産の紅茶

・くず湯や昆布茶(冬季のみ)

・ジェラート(夏季のみ)

「敷居は低く、品質は高く」が「茶fe」でのモットー。

日本茶が苦手な人も休憩できるようにとの、織田さんの心遣いなのだ。

上生菓子と加賀紅茶のブリュレ。上生菓子のデザインは日替わり。訪問時のお楽しみだ。

 

 

お茶でホッとひと息つける日本人のDNA

茶文化教育イベントへの参画や世界規模コーヒーカフェチェーンとのコラボを果たすなど、活躍を続ける。

 

「急須を持たないお宅も増えています。日本人の誰もが家に帰ればいつでもお茶を淹れて飲めるという時代ではなくなってきている」と話す織田さん。

忙しい時にちょっと立ち寄ってお茶を飲める。そのためにも「茶fe」スペースを作りたかったのだとも語ってくれた。

 

取材中も休むことなく働く織田さんに問うと、案の定、休日らしい休日はほとんど無いそうだ。そんな日々のなか、仕事を終えて自宅で好きなお茶を飲む瞬間が、貴重なリラックスタイムだという。

 

「忙しいのは、息子に次を譲って引退するまでの間だけ。息子のためにも、お茶文化を残しておかなくちゃ」と父親らしい一面ものぞかせる織田さんだが、息子さんはまだ小学生だ。

「僕も、今でも店を手伝う父が、口出しせず自由にやらせてくれるのが嬉しいんです」

と、自身も父親を尊敬する息子としての顔を見せることもあった。

 

父から子へ。そのまた子どもへと受け継がれるもの。

 

誰もが一人でも起業できる現代にあって、久しぶりに穏当で温かい世代継承模様を見せてもらった想いがする。

古いものと新しいものが一緒になって、次の時代を受け入れていくのだろう。

どの時代でもきっと、店内にたゆたう心地よいお茶の香りが変わることはない。

 

 

※価格はすべて税込み

 

取材日時  2019年4月11

 

取材・文  廣中 恵

店舗情報

店舗名 茶fe
住所 金沢市下新町1-7
電話番号 076-231-0390
営業時間 9:00~17:30
定休日 第3日曜