客の求めに応じて作る料理がその日のメニュー「食彩 赤まんま」
片町スクランブル交差点から大工町へ。小路に入って3軒目。控えめに掲げられた看板が目印の「赤まんま」は、おいしい旬の和食と店主との会話が楽しめる店。季節ごと、その日ごとに店主が目利きした旬の素材がリーズナブルに楽しめる。
メニューがない? お客様の食べたいものがその日のメニュー
「毎日、同じものばかりつくるのはつまらないなぁと思ったんです」
そういって笑うのは、大工町にある「食彩 赤まんま」の店主 間曽誠久さん。この場所に店を構えて16年、週末には予約でいっぱいになる人気店だ。
おいしい旬の和食と、店主との会話が楽しめる店として評判だが、この店一番の特徴はメニューがないこと。店内に掲げられた黒板に、その日仕入れた素材が書き込まれていて、そこから好きなものを選んで、料理してもらうオーダー方式だ。
「以前は、たくさんメニューを用意していたこともあるんですが、昨年来のイレギュラー期間に『決まったメニューがない方が、お客様も楽しいんじゃないか』と考えたんです」。
大将おまかせの「ちょい飲みセット(2000円~)」。この日はコレに刺し身がついて2000円
京都から金沢に帰ってからは伯父が営む寿司店でも腕をふるったため、頼めば寿司も握ってくれる。
自家製の紫蘇シロップのサワー。爽やかな口当たりだから、水割りや炭酸割りで締めのドリンクにしてもよさそう。
店主が腕を磨いたのは京都の割烹。その板長が口癖のように言っていたのが「お客様の要望に応じて、その場で料理を作るのが『肉を割いて烹(に)る』という意味を持つ割烹の料理人の役割」ということ。
その教えにならい、以前からメニューにないものも可能な限り提供していたのだそうだが、本格的にメニューを外したのは最近のこと。おでんや煮込みなど、作り置きしておく必要があるもの以外は、材料も調理法もその場で。もちろん、作り置きの料理もその日ごとに違う。
何をどう頼んでいいか迷っても、店主におまかせ(2000円~)でオーダーもできるから、初めての人も安心な上、洋食メニューのわがままに応えてくれることも。
飲食店には厳しい時期をアイディアで転換するやわらかい発想も、ここが人気店である理由のひとつなんだろう。
「真顔だと怖いと言われがちだから写真は苦手」とはにかむ間曽さん。
女子会にも一人飲みにも、デートにも重宝
店内は、カウンターにテーブルが3席と小上がりが1席。加えて2階に30人ほどが入れる座敷もある。時節柄、大勢で集まるのは難しいかもしれないが、それでもこの店の使い勝手は広い。
本格和食をコースや定食できちんと食べたい時はもちろん、女子会で盛り上がったり、デートなら少し格好をつけて通ぶった頼み方をしてみたり。ゆったりとしたカウンターは、一人飲みにもぴったりだ。
「食事をとった後の2軒目、3軒目としてちょい飲みに来る方や、締めの食事にと訪れてくださる方もいらっしゃいます」。
どんな時にも、懐深く受け止めてくれるのが赤まんまという店らしい。
カウンターはもちろん、テーブルからも大将の顔が見える心地いい距離感。
店名の「赤まんま」は母親譲り
「赤まんま」というのは、タデ科の一年草で、初秋に小粒の穂状の紫紅色の花を咲かせるため、秋の季語にもなっている。粒状の花をしごきとって、赤飯に見立ててままごとに使って遊んだ様子から、この名前になったと言われている。
いかにも和風な由来の植物を店名にした理由を訪ねてみた。
「母が同じ名前の店を営んでいたのが理由です。スナックだったので、店を継ぐことはできなかったんですが、せめて名前は継ぎたいなと思って」。少し照れたような表情を浮かべる大将から、お母様への愛と感謝がうかがえた。
「店は継げなかった」というものの、カウンターを挟んで会話でも訪れた人を楽しませる姿は、お母様の思いをつないでいるようにも見えた。
カウンター奥の壁で存在感を放つこの絵も、もともとはお母様の店に飾られていたもの。
※価格は税別
取材日時2021年12月9日
取材・文 小杉智美
店舗情報
店舗名 | 食彩 赤まんま |
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住所 | 金沢市大工町27 |
電話番号 | 076-231-0723 |
営業時間 | 18:00~24:00(LO23:00) |
定休日 | 不定休 |