隈研吾氏設計・スタイリッシュにリニューアルした兼六園茶屋 見城亭

2019年11月10日、金沢市の兼六園茶屋 見城亭(けんじょうてい)がリニューアルオープンした。建物は、世界的建築家・隈研吾(くまけんご)氏設計によるリノベーションで黒を基調としたスタイリッシュな空間に生まれ変わった。食事・カフェメニューも一新され、こだわりの素材で作られた石川の味覚を存分に味わえる。金沢城を一望できる最高のロケーションの中、上質な時間を過ごすことができる。

隈研吾氏設計・石川の新旧の技術が融合した繊細な木造建築

建物は、既存の木造2階建ての木組みを生かして内装をメインに改装された。

新国立競技場の設計を手掛けている世界的建築家・隈研吾氏に設計を依頼。古くから能登などの民家を大雪から守ってきた「サシモノ造り」と呼ばれる工法を応用したものが取り入れられており、店内の天井を見るとたくさんの木が組み合わさっているのが見える。

その木の下に細いワイヤーのようなものが張り巡らされている。これは地元石川の小松マテーレが開発した「カボコーマ」と呼ばれる炭素繊維複合材で、耐震性を高めるために使用されている。軽量だが鉄の10倍の強度を持つ。さびや結露が生じないので木造建築と相性が良く、新国立競技場や重要文化財の耐震補強に使われている最先端の素材だ。

見城亭は、まさに石川の新旧の技術が融合した木造建築なのだ。

 

木が組み合わさった「サシモノ造り」と耐震補強のために用いられたワイヤー状の「カボコーマ・ストランドロッド」

 

床や壁、天井は黒で統一されており、和紙の内側に金箔を貼って作られた照明が昼間でもよく映える。江戸武家屋敷を思わせる内装からは、金沢らしい繊細な建築美が感じられる。

 

 

内側に金箔が貼られた照明も、隈氏の案。夕刻になると、周りの窓にも灯りが映り、より幻想的な雰囲気になる。

 

 

 

石川の郷土料理や地物食材を存分に味わえる食事メニュー

1階のカフェは26席、2階のレストランは35席あり、金沢城側と兼六園桂坂口側に大きく窓を取っている。その眺望を生かしたカウンター席を広めに設けており、1人で訪れてもゆったりと寛ぐことができることが特長だ。春は桜、夏は新緑、秋は紅葉、冬は雪景色と季節の移り変わりも楽しむことができる。

2階のカウンター席は、金沢城の石川門や兼六園桂坂口を眺めながら優雅に食事をすることができる。

 

2階のレストランでは、石川の郷土料理や地物食材を存分に味わえる数々のメニューが用意されている。

その中でもおすすめのメニューをマネージャーの橋本 唯さんに伺った。

1つ目のおすすめは、手まり寿司や郷土料理が味わえる「特選 珠姫の宝石箱(4,000円)」。

「可愛らしい赤い箱を使っており、昔の園遊弁当をイメージして作らせていただいています。手まり寿司は近江町からの鮮魚を使っており、能登で獲れたふぐの唐揚げ、郷土料理の鶏の治部煮、加賀蓮根の蒸し物など地物食材をたくさん楽しんでいただけます」と橋本さん。

こちらの「鶏の治部煮」は、県外の方に「これが金沢の治部煮です」と自信を持っておすすめできる絶品の郷土料理だ。片栗粉がまぶされたやわらかな鶏肉やすだれ麩にとろみのあるお出汁がしみて本当に美味しい。見城亭でぜひ食べていただきたい一品だ。

「特選 珠姫の宝石箱」。お料理が入った赤い箱は引き出しに入った状態で席まで運ばれてくる。

 

2つ目のおすすめは、香箱がに、たら鍋がメインの「特選 見城亭の季節御膳~冬のおもてなし~(5,000円)」。

「冬の石川県で獲れる美味しいものだけを入れて作らせていただいています。香箱がにをまるごと1杯使用しており、たら鍋では白子と真子も入って、たらを存分に楽しめます」。香箱がには焚き込み御飯や酢の物で味わえる。濃厚な旨味の「たらの白子」は地元民にも好まれている石川の冬の味覚だ。

「特選 見城亭の季節御膳~冬のおもてなし~」

 

他にも治部煮やお刺身、九谷焼の器も楽しめる「珠姫の宝石箱(2,700円)」やぶりしゃぶが味わえる「見城亭の季節御膳(3,000円)」などがある。

 

 

 

二三味珈琲の「見城亭オリジナルブレンド」がいただけるカフェ

1階のカフェでは厳選された素材のみを使用した、こだわりのスイーツやドリンクが楽しめる。「野田屋茶店」の香り高い抹茶、「丸八製茶場」の献上加賀棒茶、コーヒーやお抹茶に添えられる落雁は「諸江屋」と見城亭がコラボしたオリジナル商品。どれも金沢人が愛するお店のものばかりだ。

1階カフェのカウンター席。カウンターの中には茶釜や茶道具があり、ここで抹茶を点てている。

 

兼六園桂坂口に面したカウンター席もある。石垣や季節を感じられる木々を見ながらゆったりと過ごすことができる。

 

特筆すべきは、能登半島の最北端・珠洲の人気焙煎所「二三味(にざみ)珈琲」のコーヒーがいただけるということ。それも見城亭のために作られたオリジナルブレンドだという。二三味珈琲は人気だが金沢でも飲めるお店は少なく、地元民にとってもうれしい。香り高く、深入りなのが特長で、砂糖の代わりに添えらえた金箔入りの和三盆とも相性がいい。

「珈琲 見城亭ブレンド 落雁付(650円)」。添えられた落雁は諸江屋とのコラボ商品「JAPAN」。落雁に日本地図が描かれている。

 

スイーツのおすすめは、「濃厚抹茶フォンデュ玉手箱(1,800円)」。三段の玉手箱の中に、フルーツや焼き菓子、みずまんじゅう、お団子、求肥(ぎゅうひ)などが入っており、濃厚な抹茶ソースにつけていただく。

「抹茶ソースは野田屋茶店さんにあるいろいろな抹茶を試してみて、厳選した2種をブレンドしています。ホワイトチョコと生クリームも入っています」と橋本さん。

最後に器に残った抹茶ソースの中に温かいミルクを入れて、抹茶ミルクとしても楽しめる。

赤い箱とソースの入った器が可愛いと人気の「濃厚抹茶フォンデュ玉手箱」

 

箱には、フルーツや焼き菓子、みずまんじゅう、お団子、求肥(ぎゅうひ)などが入っている。

他にも「兼六園抹茶パフェ」、「濃厚抹茶アフォガード」、「黄金ぜんざい」など魅力的なこだわりのスイーツが並ぶ。

 

 

土曜は夜も営業、3月~11月は豪華な朝食の提供も

通常、食事はランチのみだが、土曜の夜は「見城亭 季節の会席(7,000円~)」も楽しめる。10名以上なら土曜以外でも予約ができる。

また、3月~11月は日曜限定で「見城亭のおいしい朝ごはん(2,300円)」も提供される。朝の兼六園の散策の後におすすめだ。

 

 

1人1人のお客様に上質な時間を過ごしていただきたい

創業100余年、兼六園の顔として観光客をもてなしてきた「見城亭」。

どのような経緯でリニューアルすることになったのかを橋本さんに聞いてみた。

「もともと見城亭は、兼六園に隣接した「兼見御亭(けんけんおちん)」と「見城亭」、ひがし茶屋街の「懐華樓(かいかろう)」の3店舗を運営してきました。「兼見御亭」は団体様を多く受け入れていた大きな建物だったのですが、旅行形態が団体から個人へとシフトし、個人旅行のお客様が増えてきました。そこで1人1人のお客様に向き合うために、「見城亭」と「懐華樓」の2店舗に絞って運営することになりました」。

おひとりさまの観光客の方にも、落ち着いてゆったりと寛いでもらい、上質な金沢ならではの「しつらい」や「おもてなし」を提供するためのリニューアルなのだ。

1階のギフトコーナーには店内で提供されている諸江屋とコラボしたオリジナル落雁や二三味珈琲の見城亭ブレンドなどが購入できる。ギフトはすべて白の見城亭オリジナルパッケージで統一されている。

 

「県外のお客様にはゆっくりと上質な時間を過ごしていただきたいです。県内のお客様にも、大切な人が金沢に遊びに来たら連れて行きたいと思ってもらえるようなお店にしていきたい。これは、スタッフ全員が目指しているところです。石川県に来たならここにぜひ立ち寄りたい、ゆくゆくは金沢に行こうではなく、見城亭に行こうと思ってもらえるまでになりたいと思っています」。

スタッフの方の熱い想いが橋本さんの言葉から伝わってきた。上質な空間、こだわりぬいた地元食材を使った食事やスイーツ。お客様を迎える環境は万全に整った。石川の魅力を存分に味わえるお店と自信を持っておすすめできるお店だ。観光客の方はもちろん、地元の方もぜひ行ってみてほしい。改めて金沢の工芸や食文化の素晴らしさを実感することができるだろう。

 

 

 

※価格はすべて税別

 

 

取材日時 20191212

 

 

取材・文 岡崎真由美

店舗情報

店舗名 兼六園茶屋 見城亭
住所 金沢市兼六町1-19
電話番号 076-222-1600
営業時間 ●1階カフェ/10:00~16:30 ● 2階/朝食8:00~10:30(3月~11月の日曜日のみ) /昼食11:00~15:00 /夕食 17:00~21:00(土曜日のみ)
定休日 火曜日