尾張町で台湾情緒を味わえる「四知堂(スーチータン)Kanazawa」
城下町の風情を色濃く残す尾張町にオープンした台湾料理店「四知堂(スーチータン)Kanazawa」。すぐ近くには泉鏡花記念館があり、浅野川大橋までも徒歩数分のロケーションも抜群の場所だ。
江戸時代から続く油問屋の旧社屋をリノベーションしたノスタルジックな店構え
加賀藩初代・前田利家が入沢した時に尾張(現在の愛知県西半部)から随行してきた商人が多く住んだことが地名の由来になっている尾張町。そのせいか老舗も多く往時の気配を色濃く残すまちだ。最近では、新しくオープンする店も多く、新旧がほどよく混ざりあった独特の雰囲気をかもしている。
2020年8月にオープンした「四知堂」もそのひとつ。風情あるたたずまいは、もとは江戸時代から続く油・塗料問屋「森忠商店」の社屋として使われていたもの。大正7年に建てられた建物は、瓦葺きの金沢らしい姿でありながら、大きなガラスの引き戸が目を引き、当時は相当なハイカラだったと想像できる。
店内も、使い込まれた建具や床にこぼれた塗料の跡がノスタルジックの気分を誘う。
森忠商店として使われていたままの建具。凝った細工が美しい。
四知堂は、もともと台湾の人気店。伝統的な台湾料理をベースにした創作料理の店で、台湾のグルメガイドには必ずと言っていいほど掲載され、ハイセンスな地元っ子はもちろん、世界中にファンのいる名店だ。
その台湾四知堂と同じ名前を持つ「四知堂Kanazawa」。オープンの経緯をオーナーの塚本美樹さんに尋ねると、
「私はもともとアンティークショップを経営しているのですが、台湾のオーナーはその店のお客様だったんです」。年に数度、来店するうちに親しくなり、プライベートでも行き来するほど意気投合したのだと言います。
「私もたびたび台湾を訪れるようになり、台湾の食文化に触れて、金沢の文化と重なる部分を感じました。この豊かな台湾の食文化を金沢でも食べられたらいいと思ったのがきっかけです。いい名前だったので使いたいと言ったら快諾してくれました」と教えてくれた。
本店、支店という関係ではなく、思いを共有した同志というイメージなのだとか。
四知堂Kanazawaのメニューは、台湾の1日を、食を通して感じられる構成になっている。台湾の四知堂とはメニュー自体は別だが、互いにアイディアを出し合ったり、調味料を送ってもらうなどしているそうで、日台がゆるやかにフュージョンしている。
台湾屋台をイメージした店内。墨書きのお品書きはどこか異国情緒をかもしている。
台湾気分を味わえる、屋台風の明るい店内
営業は朝8時から。この時間のおすすめは台湾粥(600円)。鶏肉、あさり、干しエビの旨みたっぷりのスープにショウガのアクセントが効いた滋味豊かなおかゆ。サラサラトロトロのおかゆは、のど越しもよく、体を内側からじんわりと温めてくれるので、寒い時期だけでなく、これからの暑気にあてられた体もよろこびそう。
朝のやさしいパワーチャージでからだが目覚める
台湾のハンバーガーともいえる割包(グァパオ)(480円)も小腹を満たすのにぴったり。ふわふわの蒸しパンにじっくり煮込んだトロトロの角煮をはさんだ台湾ストリートフードの代表ともいえるもの。がぶりとかぶりついて、口いっぱいに頬張るのが一番おいしい食べ方だ!
自家製蒸しパンに染み込む能登豚の角煮のタレがたまらない。
デザートにはぜひ豆花(トウファ)(600円/小400円)を!
豆乳をふんわりと固めたものにやわらかく煮た3種の豆、団子と歯ごたえのいいキクラゲなどを贅沢にトッピング。これに自家製のシロップをかけたヘルシースイーツ。時期によっては、期間限定で桜やフルーツの豆花もあるので、季節ごとに食べ比べたい。
屋台風にしつらえられた明るい空間で食べれば、気分は台湾! 旅行気分も味わえる、かも。
豆乳とお豆で、高タンパク低糖質。ダイエット中にもうれしい台湾伝統スイーツ。
落ち着いた雰囲気で金沢らしさと台湾情緒を同時に感じる
ランチやディナータイムは、落ち着いたレストランスペースで。
柱や梁など、もとの建物の造りを残し、テーブルや椅子などの調度にも深い色を使ったシックな店内は、広さを活かして席と席の間もゆったりと取られている。インテリアにはさりげなくアンティークも取り入れられ、空間に華を添えている。贅沢な空間の使い方、落とし気味の照明に高い天井と、食事も会話も弾みそうな雰囲気だ。
坪庭は、日中は陽光を受けて明るく、夜はしっとりと。全く違う表情をみせてくれる。
ランチタイムは、屋台でも人気の魯肉飯(ルーローファン)や鶏肉飯(ヂィローファン)、牛肉麺(ニュウローメン)をドリンク、スイーツとセットで(魯肉飯、鶏肉飯ランチ1,500円、牛肉麺1,700円)。ディナータイムは、季節の鍋料理がメインのコース(5,500円)を。彩りも豊かな前菜に始まり、スパイスの効いた鍋、締めは台湾のソウルフードの一つで、そうめんのような細い麺線。台湾スイーツのデザートと台湾茶まで、異国情緒を味わい尽くせる。ディナータイムは、近くアラカルトの提供も開始するという。これも楽しみだ。
テーブルの他、カウンター席もあるから、ひとりで訪れてもゆっくりと過ごせそうだ。
鶏肉飯セット(1500円)。デザートは季節によって変わる。写真は台湾の伝統的スイーツ仙草ゼリー。一口菓子の雪花餅(シェーキューピン)も添えられる。
紹興酒鶏鍋(写真)と白湯海鮮鍋の2種から選べるコース料理。鍋は台湾では夏でも、一人でも食べるのだそう。
香り高い台湾茶は単品でのオーダーも可。
「四知堂Kanazawaでは、食文化が豊かな金沢での食体験の多様性や可能性を伝えたいという思いがあります。食というキーワードを通して、金沢のいい文化を伝えていきたい」(塚本さん)。尾張町というロケーションも、老舗をリノベーションした店舗も、その思いをかたちにしたものなのだろう。
そのおかげで、おいしいものが食べられるのは地元の約得! 屋台料理を中心に、メニューの多くはテイクアウトができるので、おうち時間のおともにするのもよさそう。
※価格はすべて税別
取材日時2021年5月17日
取材・文 小杉智美
店舗情報
店舗名 | 四知堂Kanazawa |
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住所 | 金沢市尾張町2-11-24 |
電話番号 | 076-254-5505 |
営業時間 | 8:00~16:00、18:00~22:00 |
定休日 | 水曜 |