金沢生まれの陶磁器メーカーNIKKO(ニッコー)×町家カフェ「白磁」
「白磁」があるのは、ひがし茶屋街のメインストリートの突き当たりのT字路を北に向かった小路の中程。金沢の町家特有の木虫籠格子が並ぶ静かな通りに面している。
移転したお茶屋の建物を引き継いだギャラリーショップ&カフェ
今や金沢の代名詞ともいえるひがし茶屋街。多くの人で賑わうメインストリートを少し奥に進むと宇多須神社に続く路地がある。その中程にあるのが陶磁器メーカー・ニッコーのギャラリーショップとカフェがコラボした「白磁」。2018年9月にオープンしたばかりのカフェだ。
最近までお茶屋として使われていた店舗は、通りに面した木虫籠(きむすこ)格子や玄関口からまっすぐに伸びる階段、風格を感じさせる梁など、そこかしこに金沢らしい町家の雰囲気と茶屋文化の気配が残っている。
メインストリートの喧噪から少し離れた「白磁」のある小路。
日本を代表する陶磁器メーカーのひとつとして有名なニッコーは、1908年に金沢で創業し現在の本社は白山市にある。2019年は創業111周年を迎えた。
旧加賀藩前田家の時代から続く匠の技で作り出されるニッコーのボーンチャイナは「世界一白い」と言われるほどの純白と美しさを誇る。
そのボーンチャイナのオンリーショップを備えることが「白磁」という店名の由来になったのだとか。
「世界一白いニッコーのボーンチャイナを見て、触れて、使って、購入できる」が「白磁」のコンセプトだ。
ボーンチャイナの純白と木虫籠越しの紅殻のコントラストも美しい
一枚板のカウンターで味わう坪庭と金沢ラテ
1階のカフェスペースには一枚板のカウンター。席はカウンターの8席だけと決して広くはないものの、ゆったりと大きめな椅子とすっきりと整えられた空間が心地いい。席に座ると正面にはお茶屋のころからそのままだという坪庭がある。
混雑時には、2階の座敷にも案内してもらえる。そちらでは、本物のお茶屋の雰囲気も味わえる。
カウンター正面の坪庭はまるで日本画の一枚絵のよう
豊富なカフェメニューの中から、ぜひオーダーしたいのが金沢ラテ(750円)。ふわふわの泡の上に、ひがし茶屋街と兼六園、それに世界一美しい駅にも選ばれた金沢駅の鼓門といった金沢の景色を写したラテアートが描かれる。
ラテアートの元になった絵は、店長の山根照美さんが描いたのだと、ラテを運んでくれたスタッフが教えてくれた。
「白磁」のラテは3種類ある。酸味を抑えた柔らかい苦味のブレンドコーヒーと金沢では珍しいベトナムコーヒー、優しい香りの抹茶。このうちラテアートを描くことができるのはブレンドコーヒーとベトナムコーヒーだ。
コーヒーとラテは、6種類のカップから好きなものを選ぶことができる
スイーツの人気は、毎日、店で焼かれる日替わりの手作りケーキ(480円)とビターカラメルプリン(480円)。ケーキが焼き上がる時間には、香ばしい香りが通りにまで漂うそうで、この香りに引きつけられて訪れる人もいるほど。
ケーキと並ぶ人気メニューは、七尾市のイタリアンジェラート専門店・チェルキオのジェラート。地元こだわりジェラート2種盛り(680円)は、常時4~5種類用意されている中から好きな組み合わせを選ぶことができる。
定番のチョコレートとナッツのケーキ。ボーンチャイナの白によく映える
水の流れをイメージした滑らかな曲線が特徴的なジェラートの器は、サラダやスープボウルとしてもおすすめ
純白のボーンチャイナを日常に取り入れる提案も
「白磁」で使われる食器は当然、すべてニッコーのもの。ギャラリーショップとのコラボカフェだからというのはもちろんだが、これに加えて「上質な洋食器を毎日の食卓に取り入れて欲しいから」なのだそう。
純白の洋食器を使いこなせないという人は案外多い。「白磁」を訪れる人の中にも「どんな料理が似合うのかわからない」「おしゃれな盛り付けができない」と話す人が多いのだとか。
「ショップでは、そういうお客様に使い方の提案も含めて商品をご紹介しています」と山根店長。主婦である自身も家で煮物や炒め物など、日常の料理に使っているからこその提案を聞くことができる。
お客様とのコミュニケーションを大切にしたいと笑顔をほころばせる山根照美店長
金沢で生まれ、金沢の文化を受け継ぐニッコーの存在をもっと知って欲しいという他、山根店長にはもうひとつの野望がある。
それは「白磁を多くの人が集まるコミュニティスペースにしたい」。
「ひがし茶屋街という場所柄、今は県外や海外からの観光客が多くいらっしゃいます。この店が、そういう方々と地元の方が交流できる場所にしていきたいと思っています」。そのために、これからはより幅広い人が訪れやすいようイベントも計画しているのだという。
イベントの第一弾は店舗2階の座敷で行う「夏休み絵付け体験」(参加料3,000円飲み物付き/要予約)。ニッコーのボーンチャイナに9色の絵の具を使って思い思いに絵付けを施す。
白磁のコンセプトである「見て、触れて、使って」に「作って」が加われば、愛着もひときわ増すこと請け合いだ。
※価格はすべて税込み
取材日時2019年7月17日
取材・文 小杉智美
店舗情報
店舗名 | 白磁 |
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住所 | 金沢市東山1-25-6 |
電話番号 | 076-256-1089 |
営業時間 | 10:00~17:30 |
定休日 | 木曜日 |