金沢を「食の壁のないまち」に!「るみえ~る」の活動

豊かで新鮮な食材に恵まれた海も山も近い金沢は、加賀藩百万石の食文化を誇り、全国はもちろん世界中から多くの人が訪れる「食のまち」。その食のまち金沢で、食物アレルギーを持つ人をはじめ、食べることに制限のある人々が「食べること」を楽しむことができるよう啓蒙や情報発信を行っているのが「るみえ~る」だ。

食物アレルギーは「かわいそう」ではない

食べ物の壁というと、食物アレルギーを思い浮かべる人も少なくないだろう。

「るみえ~る」のメンバーのひとり、寺西円さんは、次男が乳と卵、小麦にアレルギーを持っているという。

「子どもがアレルギーを持っていると言うと『かわいそう』と言われることは少なくありません」という。確かに、家庭内はもちろん、学校給食や外食など、制限も少なくないことは想像に難くない。

「でも私はそうは思いません」寺西さんは笑顔で続ける。

「食物アレルギーを持っているのはかわいそうなことではなく、自分の体にどんな食べ物が必要で、いいのかを体が自ら発してくれている」というのが寺西さんの持論で、幼いころから次男にもそう話していたという。

アレルギーについて、やさしく声を上げていきたいと話す寺西円さん。出身は小松市

 

とはいえ、やはり食事作りに苦労は少なくなかった。中でも一番大変だったのは外食だったという。そんなときにるみえ~るの活動を知り、当時生活していた大阪から金沢に移住を決めた。

「地元にも近い金沢で、食の壁を取り払おうとしている人がいる。これはもう運命だと思いました」なのだとか。

その時に寺西さんが見たのが、金沢市の助成を受けてるみえ~るが作成している「食のバリアフリーマップ」だ。

アレルギー対応やベジタリアン、ヴィーガン対応のメニューを出している店舗のマップ(現在はウェブ版のみ)

 

「食のバリアフリーマップ」は、金沢市内と近郊で食に制限のある人が安心して食べられるメニューを提供している店舗の一覧で、主なカテゴリーは

・卵・乳なしのメニューあり

・小麦粉なしのメニューあり

・ベジタリアン対応メニューあり

・ヴィーガン対応メニューあり

4つ。

和食に洋食、エスニック、ファミリーレストランチェーン、パンやスイーツまで、幅広い店舗が参画している。

 

https://kanazawa-food.jp/

 

金沢市食のバリアフリーマップ協賛店(一部)

 

 

 

食べ物は障壁ではなく架け橋

るみえ~るに参加した寺西さんは、すぐに積極的に活動を開始した。

「息子のアレルギーを気にかけてくれていた小松の両親からよく送られてきた米粉のマフィンが、るみえ~るの事務局長の店のものだと知って、また運命を感じて。これはもうやるしかないでしょう()」。

寺西さんがまず着手したのは「アレルギー特定原材料」の表示について。

現在、日本では「アレルギー特定原材料」として8種類の食品の使用表示が義務付けられている。これに加え20種類の食品が「特定原材料に準ずるもの」として表示を推奨している。

この表示義務は「容器包装された食品」が対象で、外食や中食の提供の場合は適応されないという。とはいえ、飲食店のメニュー表などでも特定原材料の使用有無を見かけることは増えているように感じる。

そう伝えると、

「それはもちろんありがたいと感じていますが、この表示が逆に選択肢を狭めているケースもあるんです」と困ったような表情を見せる寺西さん。

 

例えば……と話してくれたのが、醤油についての経験だ。

醬油は、原材料に小麦を使っているため、アレルギー特定原材料を含む食品となる。ただ、小麦アレルギーを持っていても、醤油は摂取できる人が少なくないという。寺西さんの息子もそのケースだ。

調べてみると、醤油を醸造する過程で、小麦のタンパク質が分解されてアレルゲン性がなくなるのだそうだ。もちろん個人差があるため、全員に当てはまるわけではない。

「だから、家では醤油を使った料理を食べていても、外で食事をするとお店の方から『食べないで』と言われてしまうんです」それがとても残念だと話す。

そこで、寺西さんは特定原材料の表示をもっと細分化していけば、選択の幅を狭められることが減っていくのではないか、と活動を展開している。

るみえ~るのHPやイベントなどで使用しているスライド。これだけでもアレルギーへの理解が深まる情報がたっぷり

 

るみえ~るの行動のベースになっているのは「人が生きるために摂取し、コミュニケーションや楽しみにもつながる食べ物は、障壁ではなく架け橋であるべき」という思いだ。

体質や主義によって食べられる食物が限られるからと言って、人々の行動や思考が制限される世の中は悲しい。悲しい思いをする人が一人でも減ることが、明るい未来を創るなら、食のまち金沢からその世界を発信していきたいと、寺西さんは瞳を輝かせる。

 

 

 

アレルギー科医とのコラボレーションやイベントも続々

2024年2月18日、るみえ~るの主催で石川県立図書館で「いしかわおうえん 笑顔の食と癒しフェスタ」を開催した。ヴィーガンカレーやグルテンフリースイーツの提供や発酵あんこのおはぎの作成体験、ヨガなどのワークショップと20店舗ほどが参加し、多くの人でにぎわった。

4月に開催された金沢の老舗豆腐店 羽二重豆腐㈱とのコラボイベント スイーツ試食会

 

 

世代性別問わず、多くの人が参加し、楽しみながら食や癒しを学んだ

 

他にも、スイーツを食べながらのグルテンフリーやアレルギーを学ぶお茶会、アレルギー科の医師とのコラボレーションなど、アレルギーの正しい理解を深められるイベントを数多く展開。企画中のものも多い。

 10月にはいしかわ子ども交流センター(金沢市法島町)でアレルギー専門医の講演会とアレルギーに対応したスイーツに関するイベントも予定している。

 アレルギーについての意識調査アンケートも実施中。

アンケートは、アレルギーを持っている人やその家族はもちろん、食物アレルギーのない人の意見も広く募っている。回答や活動に興味を持った人は、HPInstagramから問い合わせてほしい。

 

 

▼HP

https://kanazawa-food.jp/about/

▼Instagram

https://www.instagram.com/lumiere.ishikawa/

 

 

 

取材日時 2024424

 

取材・文 小杉智美

 

 

 

店舗情報

店舗名 るみえ~る
住所 金沢市大手町2-25カフェロサンゼルスin金澤内