金沢の真ん中にある「ティールーム&バーぽっちゃん」でおいしい紅茶とお酒をいただく

香林坊エリアのランドマーク・香林坊大和のすぐそば、石川県教育会館の1階にある「ぽっちゃん」は、昼は紅茶専門店、夜はバーの2つの顔を持つ店。ダークブラウンと白でまとめられた落ち着いた雰囲気の中、迎えてくれるのは元教師のマスターだ。

教師歴35年の元教頭先生が営む店

ぽっちゃんがオープンしたのは202011月。オーナーの木戸さんの前職は小学校の教師。6年生の担任になることも多く、たくさんの子どもたちを次の学校へと送り出してきたのだそう。

「同窓会に呼んでもらったり、成人した教え子と会う機会もあった中、彼らが気軽に集まることができる場所があるといいな、と思ったのが店を始めるきっかけでした。はじめは私一人でバーをやろうと思い、準備を始めたところ、この場所を見つけたんです。ご縁を感じてコロナ禍ではありましたが決断しました。」

「この場所」というのは、教員時代には会議や研修で何度も訪れた石川県教育会館。確かに、この上ない「ご縁」だ。

教え子だけでなく、訪れた人の癒やしになるような店にしたいという思いから、店名は3年前まで家族とともにいた愛犬の名前をつけた。「仕事で疲れて帰ってきても『ぽっちゃん』にはとても癒やされたので、今度は私たちがそんな存在になればいいなと思ったんです」と懐かしげに目を細めた。

カウンターとテーブル合わせて16席。「子育てママDAY」「石川県外出身者DAY」などのスペシャル企画も計画中とか。

 

 

今までとは全く違う道への転身に、ご家族の反応をうかがうと「反対はありませんでしたね。それどころか、私がバーをやりたいというと、妻は『なら日中は私が紅茶の店をやる』と提案してきました」

奥様は、もともと紅茶が好きで、紅茶の教室にも通っていたという。深く学ぶほどに、紅茶の美味しさや奥深さをもっと多くの人にも知ってもらいたいと思うようになったのだとか。

こうして「昼のぽっちゃん」と「夜のぽっちゃん」が誕生した。

夫婦のほか、ティールームを娘さんが手伝い、店のロゴにもなっている愛犬ぽっちゃんの顔はもう一人の娘さんが描いた。

店内は、そんな家庭的なあたたかさと心地よさに満たされている。

ボードに並ぶカップの多くは、もともと奥様が趣味で集めていたもの。ポットでサーブされる紅茶をオーダーすると、カップも好みのものを選ぶことができる。

 

 

 

「ティールームぽっちゃん」は、紅茶の香り高さに包まれる

提供される紅茶を一口飲むと、香り高さはもちろんのこと、そのまろやかさに驚く。専門店なのだから当然と思うなかれ。茶葉特有の渋みを一切感じないやわらかさは、紅茶が苦手だという人にこそ飲んでもらいたいと思うほど。

それもそのはず。茶葉の量をきっちりと計り、蒸らし時間は茶葉の種類ごとに1秒単位で変えているのだとか。

「本当に、基本を忠実に守っているだけなんです。でも、同じ茶葉でも時期や産地によってベストの状態が変わるので、その部分に少しの工夫を加えます。例えば、加賀の和紅茶は、熱湯より5℃低いお湯を使うほうがおいしくなるんです」

楽しげにそう話すのは奥様。隣でオーナーが「紅茶は手出しできませんから、日中の私は、雑用係です」と笑う。そんな夫妻の睦まじさもこの店が居心地がいい理由のひとつだろう。

美しい水色もこだわりのたまもの。産地別のシングルオリジンティーはアイスティにしてもらうこともできて600円~。

 

 

香り高い紅茶に華を添えるスイーツは、ほとんどが手づくり。

一番人気は、オープン当初からの看板スイーツのひとつであるスコーン(1250)。甘さは控えめ、サクサクとした口当たりの中にほどよいしっとり感があって、ジャムやクリームとの相性もばっちり。

 

側面に入った亀裂がおいしいスコーンの証。スコーン2個と紅茶がセットになったクリームティーセットは、好きな紅茶が100円引きになる。

 

 

もうひとつはアールグレイの紅茶プリン(500)。幾度も試作を重ねたというだけあって、紅茶を口にしたかと思うほどの香りが口いっぱいに広がる。ベースになっているのは、たっぷりの茶葉を丁寧に煮出したロイヤルミルクティ。なめらかな口当たりで、子どもも大好きな味なのに、洗練された大人のプリンと言いたくなる。

紅茶プリン目当てのお客も多いそうで、「まずはプリン。その後に紅茶をゆっくりと」なんて頼み方をする人も。

 

 

この秋からの新メニューが自家製のあんこを使ったあんみつだ。このあんこは、奥様のお母様直伝のもの。料理上手で、折りに触れ作ってくれたおはぎのあんこがベースになっているそうだ。あんみつだけでなく、ワッフルやトーストと一緒に食べることもできる。手づくりならではのやさしい「おばあちゃんの味」だ。

紅茶と和菓子のあんみつの組み合わせは、意外なようで実は相性がいい。あんみつのさまざまな甘さと食感、口の中に広がる紅茶の香り、交互に頬張れば、エンドレスに食べられそう。

 

 

 

「バーぽっちゃん」は貸し切りもOKな交流の場

18時からは大人の時間のバーぽっちゃん。退職してから、バーの専門学校に通ってみっちりと勉強したマスターが厳選したウイスキーやカクテルが多数味わえる本格派のバーだ。

特にスコッチとジャパニーズウイスキーの品揃えが多く、加えてバーボンやアイリッシュウイスキーなども並んでいる。

オーナー一番のおすすめは、生フルーツを使った日替わりのカクテル。その日ごと、おすすめのフルーツは店内の黒板で確認することができる。

メニューのカクテルだけでなく、その日の気分や好みを伝えてオリジナルカクテルのオーダーも可能。もちろん紅茶のカクテルも◎

 

 

バーと言えば、ウェイティングや食事の後の2次会的に使われることが多いが、「訪れるさまざまな人の癒やしの場」であるぽっちゃんは、それだけにとどまらない。

夜の時間のメニューで目を引くのは、おつまみの種類の豊富さだ。ミックスナッツ(500)やチョコレート盛り合わせ(500)といったバーのおつまみとして馴染み深いものだけでなく、おでん(600)やピリ辛マーボー豆腐(600)に、ラーメン(600)、焼きおにぎり(500)といった軽食まで。

「おつまみが少ないと、どうしてもお酒を飲む人がメインになってしまう。おつまみのバリエーションが多ければ、お酒が弱い人も食べることを楽しんでもらえると思ったんです」

少人数での貸し切りもOK。なかなか外で集まる機会が持てない中、親しい仲間でこぢんまりと集うにもぴったり。

豊富なおつまみ、食事メニューは、休業中に研究したのだそう。いろんな楽しみ方ができるのもぽっちゃんの癒やしパワー。

 

 

さらに、この店ならではのメニューがある。

それは「教育相談」。金沢市と野々市市、白山市で35年間教師を努めたオーナーだけでなく、奥様は幼稚園教諭や児童館勤務の経験の持ち主。それを生かして、学校には相談しづらい子育てや教育の悩みの相談に乗ってくれるのだ。

予約も料金も不要だから、スイーツを食べながら、紅茶やお酒を飲みながら、気軽に話してみるのもいい。きっと穏やかで優しく受け止めてもらえる。

 

 

 

 

 

※価格はすべて税込

 

取材日時20211028

 

取材・文 小杉智美

 

店舗情報

店舗名 ティールーム&バー ぽっちゃん
住所 金沢市香林坊1-2-40(石川県教育会館1F)
電話番号 076-256-1125
営業時間 12:00~17:00、18:00~23:30(22:00以降は、予約・来客がなければ閉店)
定休日 日・月曜