ひがし茶屋街の懐華樓がリニューアル・金沢一大きな茶屋建築の中で贅を味わう

金沢のひがし茶屋街にある「懐華樓(かいかろう)」は築200年の金沢で一番大きな茶屋建築だ。夜は今でも一見さんお断りを通して一晩に一組だけの華やかなお座敷を上げている。建物は金沢市指定保存建築物として一般公開されており、見学することができる。唯一無二の金の茶室などがあり、ミシュランからも高評価を得ている。昨夏に内装をメインにリニューアルをし、カフェの中やメニューも一新された。格式高い茶屋建築の中で、素材にこだわった贅沢な和スイーツやドリンクが味わえる。

お座敷見学で茶屋建築と文化を楽しむ

 

平日でも国内外の観光客で賑わっているひがし茶屋街。人気撮影スポットのひがし茶屋街を象徴する通りに懐華樓はある。茶屋街で最も玄関口が大きく、長く続く木虫籠(キムスコ)も美しい。

ひがし茶屋街を象徴する風情のある通り。右側のこげ茶色の建物が懐華樓。

 

リニューアル後、玄関口は外灯と白の暖簾のみになり、よりスタイリッシュになった。

 

 

玄関に入るとまず目を引くのが、朱漆(しゅうるし)の輪島塗の階段だ。鮮やかな朱色がお茶屋ならではの華やかな雰囲気を演出している。とても艶がありきれいだったので聞いてみると、昨年の夏にリニューアルした際、階段や客間の壁を修復したそうだ。

艶やかな朱色が美しい輪島塗の階段

 

 

懐華樓では、この築200年の茶屋建築を昼間は一般公開しており、建物を見学することができる。(見学料:大人750円、小中高生500円)

マネージャーの北村真弓さんに案内していただきながら、お話を伺った。

輪島塗の階段を上がると、朱色の壁の大座敷・朱の間がある。こちらが夜に一言さんお断りのお座敷が上げられる客間だ。

大座敷・朱の間。築200年、その間に何度も修復をしながらきれいに保たれている

 

 

奥に進むと青の壁の貴賓室・群青の間がある。この壁の色は「加賀群青(かがぐんじょう)」と呼ばれる武家の色で、朱色の客間よりも格上なのだという。

加賀群青を使った貴賓室・群青の間

 

 

群青の間に芸妓さんが使う太鼓が置かれていた。

普段なかなか知ることができないお座敷の様子を北村さんに伺った。

「お座敷では通常、踊りを2曲とその後太鼓を使ったお遊びをします。この遊びは金沢特有のもので、『散財太鼓』と呼ばれています。太鼓遊びが上手なお客様ほど何度も通われてお金を使っているのがわかるというところに由来しています。芸妓さんが叩いたリズムをまねる遊びです」。

芸妓さんの踊りや「散財太鼓」遊びで使われる太鼓

 

 

また茶屋建築ならではの面白い作りもあった。それが「裏玄関に通じる階段」だ。

「茶屋形式の建物では裏玄関に通じる階段がありまして、お客様同士が顔を合わせると気まずい時や表で会いたくない人が待っていたりする時にこっそりとお忍びでお帰りになるのに使われます」と北村さんが笑みを浮かべながら話す。

続いて案内していただいたのが、この建物で一番の見どころと言われる「金の茶室」だ。

黄金の畳の茶室で、日本でも懐華樓にしかない唯一無二のものだ。畳はい草の代わりに金箔が貼られた水引きが使われている。

絢爛豪華な金の茶室。

 

 

 

囲炉裏や木虫籠の見えるカフェで上質で贅沢な和スイーツを味わう

 

リニューアルで最も変わったのが併設されたカフェだ。

 

外国人観光客の増加に合わせ、テーブル席を設けた。テーブル席で注目すべきは、一部床がガラス張りになっているところがあり、そこから氷室(現在の冷蔵庫にあたる)が見えるところだ。

テーブル席は20席ある

 

ガラス張りの床から見える氷室

 

 

また囲炉裏のある畳のスペースは、以前はショーケースになっていた窓際にカウンター席を設けた。木虫籠越しに道行く人を眺めることができる人気席だ。

囲炉裏の席と窓際のカウンター席。

 

 

カフェメニューも一新され、どれも厳選された素材のみで作られた上質なものばかりだ。その中で変わらない人気メニューもある。

それが「懐華樓名物 黄金くずきり(1,400円)」だ。この黄金くずきりは「懐華樓名物 黄金ぜんざい(1,400円)」と同じく10年ほど前からある懐華樓の看板メニューだ。

くずきりを付ける黒蜜が金箔で覆われているのが特長。

「金箔を1枚贅沢に使っているので、金沢らしさを十分に味わっていただけると思います。くずきりも黒蜜も自家製で、心を込めて丁寧にお作りしています」と北村さん。

作りたてのくずきりはつるんとした食感が美味しく、くずきりも黒蜜もちょうどよい甘さだ。くずきりを黒蜜に付けると金箔と黒蜜がしっかりからみ、見た目でも贅沢な気分が味わえる。

「懐華樓名物 黄金くずきり」

 

 

「お抹茶 オリジナル生落雁付き(800円)」もおすすめ。抹茶は金沢屈指の日本茶専門店「野田屋茶店」の香り高い特選抹茶を使用。生落雁は金沢の老舗「諸江屋」とのコラボで作られたオリジナルのもの。落雁にあんこがはさんであり、やわらかな食感がくせになる美味しさだ。

「お抹茶 オリジナル生落雁付き」

 

カフェにはこの他にも石川・珠洲の人気コーヒー焙煎所の「二三味(にざみ)珈琲」懐華樓オリジナルブレンドや「クリーム抹茶ぜんざい エスプーマ仕立て」などこだわりの和スイーツやドリンクがある。

 

 

 

内蔵(うちぐら)のショップでは懐華樓オリジナルブランドのコスメも販売

 

カフェから出て廊下を奥に進むと、内蔵(うちぐら)を利用したショップがある。

内蔵とは建物の中にある蔵のことで、壁は火災の際も中の物を守ることができる漆喰(しっくい)づくりになっている。

懐華樓のショップ。漆喰づくりの白い壁はお城の壁などにも使われている。

 

 

こちらでは、カフェで提供しているオリジナル生落雁をはじめ、懐華樓オリジナル商品が並ぶ。

中でもおすすめは、懐華樓オリジナルのコスメブランド「Hana’s Beauty」の金箔入り化粧水とクリーム。

金箔には高い美容効果があり、特に美白効果に優れているという。

こちらは懐華樓の女将がプロデュースしており、ブランド名は女将の名を冠している。

「女性にいつまでも美しく華やかでいてほしいという女将の願いが込められています。金沢らしい金箔入りの化粧品をお使いいただくことによって、毎日のお肌のお手入れが楽しくなります」と北村さんが話す。

「Hana’s Beauty」の化粧水とクリームは、芸妓さんも愛用している。

 

 

 

茶屋建築のカフェでゆったりと上質な時間を観光客や地元の方にも楽しんでほしい

昨夏リニューアルオープンした懐華樓。リニューアル後の変化について、北村さんに聞いてみた。

「リニューアル後は、より落ち着いてお客様にお茶屋建築やカフェを楽しんでいただけていると思います」。

店の奥にあった受付を玄関に設置したり、カフェのテーブル席や窓際のカウンター席の設置などよりお客様のことを考えて作られているのがわかる。

「お茶屋建築の落ち着いた雰囲気の中、ゆったりと上質な時間を過ごしていただきたいと思っています」と北村さんが話す。

カフェメニューも地元金沢の上質な素材にこだわって作られており、観光客はもちろん地元民にとっても金沢の良さを再認識できるものになっている。

「最近は観光客の方が多いのですが、地元金沢の方にもこういったお茶屋建築やお茶屋文化を身近に感じていただきたいので、地元の方にもぜひカフェに来ていただきたいですね」と北村さん。

なお、懐華樓の各種イベントについてはウェブサイト(https://www.kaikaro.jp/)の方で確認していただきたいとのこと。

ひがし茶屋街での散策の際には、金沢らしさを満喫できる懐華樓でこだわりの和スイーツをぜひ味わってみてほしい。

 

 

 

 

※価格はすべて税込

 

取材日時 2020年1月10

 

取材・文 岡崎真由美

店舗情報

店舗名 ひがし茶屋街 懐華樓
住所 金沢市東山1-14-8
電話番号 076-253-0591
営業時間 10:00~17:00
定休日 火曜(季節により変更あり)