空間自体が作品。モダンでクールなカフェ「茶房 楓」

2019年7月に犀川ほとりの高台に誕生した「谷口吉郎・吉生記念金沢建築館」。寺町にもほど近い館の、その一角にある「茶房 楓」は寺町やにし茶屋街散策の休憩にもぴったりなオトナの雰囲気のカフェだ。

地元の名店メープルハウスがプロデュース

茶房 楓の母体は、石川県内を中心に、福井県や首都圏などに出店する地元の有名店・メープルハウス。メープルハウスは、店舗ごとにコンセプトもメニューも違っていて、その多彩さが、訪れるのが楽しい店としても人気のひとつだが、この茶房 楓は、建築館のインショップとして、見事に空間に溶け込んだ落ち着いた雰囲気が特徴だ。

建築館1階の奥に位置し、席は通りに面した大きな窓に沿うように設けられている。モノトーンでまとめられたインテリアも、建築館を設計した谷口吉生氏が手がけたのだそうだ。

このカフェとミュージアムショップは、無料ゾーンとなっているため、建物の雰囲気を味わいながら周辺散策の途中の休憩スポットとしても利用できるのが嬉しい。

建物と一体となったスタイリッシュな空間。席についてグラスを傾けるだけで絵になりそう。

 

 

 

泡を楽しむドラフトアイスコーヒーで「映え」とまろやかさを味わう

店の看板メニューのひとつが専用のマシンで泡立てたドラフトアイスコーヒー(500)。縦に細長いフルートグラスで提供されるため、泡の部分とコーヒーのコントラストが目で楽しめる一品だ。

もちろんドラフトアイスコーヒーの魅力は、いかにも「映え」な見た目だけではない。

グラスを傾け一口含むと、まず唇と舌に触れる細かな泡。コーヒー風味のホイップクリームかと思うほどのきめ細かさに驚く。

さらに傾けると泡の下から滑り込んでくるコーヒーのマイルドなこと!えぐみのない優しく柔らかな口当たりは、一度泡立てたことによるものなのだという。

 

試しにと、マシンに通す前のコーヒーを試飲させてもらった。そのまま飲むと、コクがあって酸味は控えめの、むしろ苦味に寄せたアイスコーヒー。この味を好むコーヒー好きも多いだろう深い味わいなのだが、泡立てることでこんなにも味が変わるのだろうかと思うほど。

石川県内ではまだ、提供する店がほとんどないというドラフトアイスコーヒー。珍しいだけではなく、まろやかで複雑なこの味わいを是非、実感してほしい。

県外や海外から訪れた人には、金箔入りのドラフトアイスコーヒー(700)もある。

ドラフトアイスコーヒーはブランデー入りも注文できる。アルコールはスパークリングの日本酒も。(ともに700)

 

 

ドリンクだけでは物足りないという方には、楓プレート(800)がおすすめ。

コーヒー、紅茶、棒茶の3種類から選べるドリンクに、クッキーと和菓子が付く。

この和菓子。実はメープルハウスのものではない。金沢市内の菓子舗から取り寄せているのだとか。取材に訪れた時は、本多町にある清香室町という店のものだったが、これは季節などに合わせて年に数回変わるそう。

選んでいるのはフロアスタッフ。毎回、数種類を試食して季節感やドリンクとの相性を考慮して決めている。

季節変わりの和菓子と一緒に出されるのはメープルハウスの定番人気商品のほろほろクッキー。その名の通りほろりとほどけるような食感。

 

 

フロアスタッフの前野さん()と橋本さん()。プレートの和菓子のこと、菓子舗のこと、周辺観光情報なども教えてくれる。

 

 

 

谷口吉郎・吉生記念金沢建築館とは

茶房 楓があるのは、加賀藩3代藩主前田利常が整備した寺町寺院群のメインストリートともいえる寺町通り。蛤坂交差点から山手に少し歩くと左手に見えてくる直線的でスタイリッシュな建物の1階だ。

この建物が「谷口吉郎・吉生記念金沢建築館」。

谷口吉郎氏、吉生氏は親子でともに著名な建築家。

建築館を設計したのは息子の吉生氏で、東京国立博物館の法隆寺宝物館やニューヨーク近代美術館新館なども手がけた人物。金沢では鈴木大拙館(本多町)も吉生氏の作品だ。

金沢市の名誉市民第1号で文化勲章を受章した父親の谷口吉郎氏は金沢生まれの建築家。東宮御所(現赤坂御所)や帝国劇場など日本を代表する建築の設計を手がけており、金沢建築館2階には、吉郎氏の代表作ともいえる迎賓館赤坂離宮和風別館「游心亭」の広間と茶室が忠実に再現されている。

犀川に面した窓の外は水庭になっている。風がないときは鏡のようになり、金沢の美しい四季を映す。(photo: 北嶋俊治)

 

吉郎氏の住まい跡に建てられた建築館は「建築とまちづくりを考える」ことをコンセプトとしたミュージアム。谷口吉郎・吉生両氏の顕彰、建築資料アーカイブズのほか、展覧会をはじめ、講座や建築ツアーなどさまざまな活動を通じて、訪れた人が建築文化やまちづくりについて考えるきっかけになること、金沢から世界へ建築文化の発信拠点となることを目指している。

20197月の開館直後から、全国はもちろん海外からも多くの建築ファンや専門家が訪れているという。

 

 

建築館の周囲には、寺町通りと犀川べりを結ぶ回遊路が整備されているので、散策するのも楽しい。写真は、犀川側から見た建築館の裏手。(photo: 北嶋俊治)

 

建物自体が展示作品である金沢建築館とその一角に溶け込む茶房 楓。モダンでスタイリッシュ、現代的なのに、藩政時代の風情を残した寺町の風景とも調和する心地よいこの場所を観光客だけでなく、地元に住んでいる人にも感じてもらいたい。

 

 

夜の谷口吉郎・吉生記念金沢建築館。一見シンプルながら洗練されたフォルムが際立つ。写真右手が茶房 楓があるスペース。(photo: 北嶋俊治)

 

谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館

電話:076-247-3031

開館:9:30 – 17:00 (入館は16:30まで)

常設展:310円、高校生以下無料(企画展は別途料金が発生します)

休:月曜(休日の場合は直後の平日)、年末年始

 

 

 

※価格はすべて税込み

 

取材日時20191212

 

取材・文 小杉智美

 

 

※店舗情報 外観photo: 北嶋俊治

店舗情報

photo: 北嶋俊治
店舗名 茶房 楓
住所 金沢市寺町5-1-18(谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館内)
電話番号 076-291-4213(メープルハウス本社)
営業時間 9:30 ~16:30(ラストオーダー16:00)
定休日 月曜(休日の場合は直後の平日)、年末年始