大正浪漫香るひがし茶屋街の「金魚庵」で、時間旅行を楽しむ
休日、平日を問わず多くの人が訪れる金沢のひがし茶屋街。賑やかなメインから少し離れた小路にある「金魚庵」は、紅殻格子と可愛らしい金魚型の香炉が出迎えてくれる大正浪漫あふれる町家カフェだ。
創業は「大正111年」の映えカフェ
ひがし茶屋街のメイン通りを少しそれた路地の奥、金魚庵にはノスタルジーが詰まっている。少し朱色を帯びた紅い格子戸、和服に白いエプロンの女給さん、大きなラッパが特徴の蓄音機、壁掛けのアンティークな電話にステンドグラスのランプ、大きな壁掛けの振り子時計、メニューに至るまで。
大正時代にタイムスリップしたような店内に流れる時間は「今」ではない。だから創業は「大正111年」。だから店のあいさつ文も「時間旅行」を楽しんでと書かれている。
店内のあちこちで優雅に身を泳がせる金魚は、そんなゆったりとした空間の象徴なのだろ
この場所で交わされるのはきっと、夢とロマンにあふれた乙女の密談
金魚庵に流れるノスタルジックな時間は本物。というのは、テーブルを照らすランプはもちろん、蓄音機も壁掛けの電話機も振り子時計もすべて、ディスプレイではなく現役で使っているのだ。
この雰囲気に浸るためか、和服姿で訪れる客が少なくないというのもうなずける。
蓄音機から流れるのは、少しかすれた響きの音楽
現役で活躍する電話は、実は中身はデジタル仕様。レジ周りには金魚の小物がいっぱい!
もちろんメニューも大正浪漫に満ちている
このところ人気のクリームソーダや甘味、金沢名物のハントンライスなど、金魚庵で提供されるメニューも大正浪漫に満ちた「映え」なルックス。女給さんがテーブルに届ければ「わあ♡」と黄色い声があがり、写真や動画を撮ること必至。
クリームソーダ(800円)は紅・藍・碧の3色。金魚鉢の形のグラスがこの店らしい
ビー玉をイメージした「ハイカラポンチ(800円)」大正時代は、富裕層を中心にガラス戸が少しずつ広まった時代。
見た目だけでなく、味の再現にもこだわっていて「大正時代のレシピにこだわるあまり、ウチのカレーはちょっと味気ないんです」と店主が苦笑をこぼすほど。
「ちょっと味気ない」と称するカレーは、ルーから作る本格派。好みでウスターソースをかけるスタイルで、40代後半から上の世代は「懐かしい」という人が少なくない食べ方だ。
大正のカレーは「ライス」が先。カレーライスではなく、「大正レシピのライスカレー(1,100円)」
いかにもノスタルジックなルックスだけれど、実は大正時代にはなかったハントンライス(1,100円)。金沢のご当地グルメとしてメニューイン。金魚庵のハントンライスはタルタルソース多めが特徴。適度な酸味とケチャップライスの相性も抜群。
こんもりと盛り付けられたかわいらしい見た目ながらボリュームもたっぷり。
大正時代の再現レシピはもうひとつ。映えスイーツとして人気のパンケーキだ。これも材料の調合からメニューの呼称まで、徹底的に当時にこだわっている。
金魚庵ではパンケーキではなくハットケーキ。表記は漢字で「巴的岌希」。砂糖を使わないため、焦げ目がつかず仕上がりは色白だ。
「大正レシピの白い巴的岌希(880円)」真ん中に押された焼印もかわいらしい。
金魚庵とのお約束
どちらを向いても大正浪漫にあふれた金魚庵の時間旅行をより楽しむために、金魚庵では店内での振る舞いについていくつか「お願い」をしている。
ひとつは、撮影について。
写真や動画を撮っていいのは、自分の席と店内の奥に設けられた撮影スポットだけ。
2つ目のお願いは、大正乙女は恥ずかしがり屋さんのため、女給さんの撮影はNG。
情緒たっぷりの撮影スポット。長時間専有はしないのが乙女のマナー。
特別に許可をいただいた女給さんと女将さんの2ショット。
3つ目は、順番待ちについて。
店前の路地は細く、周囲は一般の住宅が多い。生活する人の迷惑になるため、待ち時間は茶屋街を散策するなどして、店前に並ばないこと。連絡先を伝えておけば、順番が近づくと電話をかけてもらえるシステムだ。
店前で待たない約束は、営業中だけでなく開店前も同じ。店前で待っていいのは開店5分前からなので注意を。
道を塞がない、道で騒がないのも乙女のたしなみ
Instagram https://www.instagram.com/kingyo_an/
※価格はすべて税込み
取材日時 2023年7月21日
取材・文 小杉智美
店舗情報
店舗名 | 大正浪漫喫茶 金魚庵 |
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住所 | 金沢市東山1-10-4 |
電話番号 | 076-256-5642 |
営業時間 | 11:00〜17:00(LO16:30) |
定休日 | 火・水曜 |